たくさんの君を 知ってるつもりだけど

『明けましておめでとうございます。』
そんな挨拶もひと段落して、だんだん浮足だった雰囲気が落ち着いてきた今日この頃。
私は未だに、クリスマスに囚われている。

クリスマスリーディングステージ「クリスマスイブのおはなし」(便宜上舞台と呼称します)
この舞台は、クリスマスイブのおはなしという絵本の朗読と有名なクリスマスソングのライブの二本立ての、子どもを対象とした舞台である。
しかし、去る12/27、客席にいたのはほとんどが同世代の女性たちであった。

それはそうだ。新妻聖子、山寺宏一といった有名キャストのおたくは初台で平日17:30開演の舞台に来ない。一応公演自体は1週間ほど上演しているため、多くの人は土日などの公演に行くだろう。ちなみに火曜日は昼夜2公演ありましたが、年末のこんな時期なので当然休めず、私は夜のみ参戦です。悲しいね。

というかクリスマスイブのおはなしなどと題うつ作品は、クリスマスイブ、もしくはクリスマス当日に行くのが一番楽しいに決まっている。
なのになぜ私がクリスマスの2日後の火曜日に見に来たのかというと、ひとえに推しがその日しか出ないからだ。

私は正直、けっこうモチベが低かった。
推しの芝居のうまさは、回ごとに本人の感情をそのまま芝居に乗せてくるアドリブ力や、共演者の台詞の揺らぎに即座に反応してノれる対応力の高さにある。それは、台本をしっかり読み込んで、登場人物の感情を緻密に考える努力に裏打ちされたものだ。
だから、本当に即興でその場で台詞をつなぐような芝居は、実はそんなに上手くない。先日、誕生日当日の公演のアドリブシーンでちょっとしたコメントを求められ、かなり口籠もっていた。
そして、この舞台は朗読劇であり、1日しかゲストで出演しない。稽古もおそらくあまりできていないし、初共演の大御所に囲まれて、私の好きな推しが見れる可能性はかなり低かった。

1話目は、新妻聖子さん演じるあっちゃんという女の子のおはなし。
そこでもう、ぎゅっと心を掴まれた。
可愛くて歌がうまくて笑顔がかわいくて、歌がめっっっっっっっっっっっっっちゃくちゃうま〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!

新妻聖子さん本当にめちゃくちゃかわいい。
落ち着いた大人びた雰囲気と好奇心旺盛な少女のような雰囲気が共存していて、たぶんエルフみたいな寿命1000年くらいの生き物でいま250歳くらいなんだと思う
って思ってたらトークのところでご自身の子どもの話をしだして混乱した。wikiによると42歳らしい。嘘じゃん

『サンタさん、トナカイさん。こんにちは。
メリークリスマス』から始まる手紙を読むあっちゃん(推定7歳)を演じる新妻聖子さん、本当に可愛かった。

そして2話目。
サンタを演じる阿部顕嵐さんと、トナカイを演じる推しのおはなし。
阿部顕嵐さんは辞めジュで現役アイドルなだけあって歌が上手かったですね…顔がよくてトンカツ好きという可愛い一面があるキラキラアイドルを浴びました。

阿部さんがサンタの台詞を読むときは、少し声をしわがれさせたおじいさんという感じ。
地の文読んでて、発声がよくてすごく通る声をされているし、滑舌もそんな悪くなさそうで声フェチとしてはけっこう好きな声でした。

そしてトナカイの台詞。
まさかの、にゃんちゅうとドラえもん足して2で割ったみたいな声でトナカイの台詞を読んでた弊推し…地の文とトナカイの台詞の乖離がすごすぎて、最初内容が入ってきませんでした。
完全に予想外のジャブでした。
こういうところなんだよな〜〜これだから推せるんですよ、推しっていうヤツは

そして突如出てくる山寺宏一さん扮するお手紙さん。
これは、山寺宏一さんがひたすらサンタさんに届いた男の子や女の子からのお手紙を読むコーナーなのですが、これが本当にすごかった。

サンタ(阿部顕嵐)「次のお手紙は…あべあらんくんからだね」
山寺宏一「どうも…顕嵐です…(イケボ)」

本当に死ぬ。

昔、声優の推しがラジオで、「僕たちは毎晩明日収録の台本読んでるんだよ。小学生のときは宿題なんてやってなかったのに、大人になってからは毎日予習復習してるんだよ」と言っていた。
声優は、人気であればあるほど色んな役を担当している。スタジオの移動時間すら惜しいらしく、一時期の子安さんは同じスタジオにずっといて色んな作品のスタッフが時間ごとに入れ替わり立ち替わり収録していくという形式を取っていたそうだ。
そんな声優界のレジェンド中のレジェンドである山寺宏一さんは、1日限りの共演者であっても入念に下調べをされている。私は正直驚いた。1人芝居をやったことや夢十夜の朗読CDを出したことはwikiに書いてあったとしても、影響を受けた作家や好きだったアニメなんてどこにも書いていない。私はおたくとして知っているけれど、いつのニコ生で話していたのか、いつ聞いたのかすら定かじゃないくらい曖昧な記憶だ。
しかも、本当に気まぐれにしか投稿されていない本人編集のYoutubeまで見ていた。あんなんファンじゃないと見れない。山寺さんはそこらへんのDDよりも推しについて詳しかった。
しかも、察するに毎日しっかり日替わりゲストをいじっていたらしい。公演中なのに……?山寺さんだけ1日が100時間くらいあるのではなかろうか。私は訝しんだ。

山寺さんのゲストいじりも終わり、物語は進んでいく。途中、「あぁっ!サンタさん!プレゼントを忘れてますよぅ」「お〜危ないとこじゃった…」なんていう、どう考えてもこのあとあわてんぼうのサンタクロース歌うだろみたいなところで歌わないなどのツッコミポイントはあったが、2人で肩を寄せ合って赤鼻のトナカイを歌うなど、かわいいポイントはあってとてもよかった。ちなみにあわてんぼうのサンタクロースは後半のライブパートで歌っていた。どうして

最後、3話目。
山寺さん演じるケーキ屋さんのおはなし。

山寺さんは分かりやすく声を変えて読んでいたわけではなかったが、その分すごく自然に入ってくる、いい朗読だった。やっぱり私は演技がうまい人が大好きなので、演技がうまいとそれだけで大好きになってしまう。
キャラクター設定は特に語られていないけれど、愛するのどかな町で猫とのんびりと暮らしているケーキ屋さんのおじさんというキャラ設定が自然に見えてきて、改めて声優という職業は怖いなぁと思う。声質という生まれ持った武器で戦わなければならない世界で、七色の声を以って数々のキャラクターを射止めて演じてきた山寺さんの、キャラクターに合わせた声を出す力というのは声優という仕事の本質なのだと思う。これは、長年磨き続けられてきた武器だ。

これで前半の朗読が終わった。私としては、推しに1万支払ったら新妻聖子さんと山寺宏一さんの素晴らしい歌と芝居がついてきた状態なのでもうこの時点で満足してたし感動してボロ泣きしていた。しかし、これは朗読とライブの二本立てなのである。

新妻聖子さんは、レミゼなど東宝系のミュージカルにたくさん出ている歌で売っている女優である。しかも帰国子女で英語もできる。

ケーキ屋さんの話が終わり、出演者全員でジングルベルを歌う。そして、暗転。
暗闇の中で出演者がはけていくが、1人だけ、誰かが舞台の中心に残っている。

静かにピアノが前奏を奏で始める。
Amazing graceだった。
新妻さんが綺麗なソプラノで歌い始める。
私は昇天した。

この後のことは、正直よく憶えていない。
なぜかというと、このあとのJoy to the world(諸人こぞりて)の客降りで私は推しに気づいてもらえたからだ。

推しはけっこう客席を見る。
なのに、目が悪い。たぶんセンターに立っていたらセンブロ4列くらいまでしか見えていない。
だけど、不思議なことにオタクの顔はそこそこ憶えているらしく、ちゃんと自分のおたくを探しながら通路を歩いて、自分のおたくだと分かるとちゃんとそこにしっかり手を振っている。
テキトーに笑顔で手を振っていれば全員幸せになれると思う。推しは客席をしっかり見ながら手を振っているから、気を抜くと真顔だし、手を振っている方向と見ている方向は一致しないし、そもそも目はずっときょろきょろしている。
それでも、その目がしっかり私を見つけて、一瞬驚いたような顔をした瞬間。そして、明確に私に対して手を振ってくれた瞬間。

私はこの一瞬を永遠に忘れたくないな、と思う。
きっと生涯、ここでもらった幸せを胸に抱いて生きていくのだ。

私はそれ以来、クリスマスに囚われている。
新妻さんの歌声に、山寺さんの演技力に、阿部さんのキラキラに。
あの空間の楽しさに。

そして何よりも、目が合ったあの瞬間の推しに。


これからも僕を 油断させないで!(タイトル回収)


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