いつか燃え尽きて 粉々になってもいい

 カミシモ3 決戦前夜篇を見ました。剣劇の感想も下書きに置かれたまま、千秋楽配信を流しながらこの記事を書き始めています。
 先に断っておきますが、私は100%楽しめたかと聞かれたらそうでもない人間なので、どちらかといえばお気持ち表明の記事です。うまく消化できないモヤモヤを言語化するためにこの記事を書いています。楽しかった方はこんな記事など読まずに、ご自身の感じた思いを大切にしていただければと思います。

 私は初日に劇場でこれを見たとき、正直いうとnot for meな舞台で悲しくなってしまった。全体的にシリアスな雰囲気が続くからわちゃわちゃが全然ないのがちょっと期待外れのように思えてしまったし、カミシモという作品や天野というキャラクターがとても好きだったのに、天野の好きだったところがどこかにいってしまったように感じた。
 舞台シーズン1の天野は後輩ポジションで、色んな先輩のことを見ていて、色んな台詞や日替わりのちょっとした動きにアイディアをもらって最後の漫才に活かしたりしていた。私はそういうまっさらでフラットな天野が好きだったし、他の人の芝居を吸収して即座に真似してくる技術力のある推しのことが好きだった。でもきっとそれは、脚本上で現多さん以外の人たちと絡む時間がしっかりあったこと、メタな話をすれば稽古期間がちゃんと取れていたことや公演数が多かったこと、これまで共演したことのある方々が多かったことで成り立っていたものなのだと思った。

 私の記憶が正しければ、配信で全員顔を合わせたことはあるとしても、舞台としては陳内さん木津さん以外は初共演なはずだ。そして、4/16が前の舞台の千秋楽だったから、推しが稽古に本格参加したのは4/17。カミシモ初日が5/3。2週間くらいしかしっかり稽古できていない計算になる。
 舞台上で毎回アドリブに対応するには、相手の手札をしっかり知らないと難しい。カテコで、何が起こるか分からないから……何してくるか分からないから……といった内容を推しを見ながらいう光景を2度ほど見た。そこまで入ってない人間でも2回見ているので、本当はもっと言われている気がする。変人に対してキャラを崩さずアドリブで対抗できるような人材は貴重なのだと、この公演期間に何度も考えていた。

 また、東京公演のときに過去のカラオケネタを引っ張ってきた回もあった。私は見れてよかった反面、ズルだなあと思った。カミシモのオタクとしては嬉しいけれど、一発勝負のパチファンという舞台なら現実的に絶対やらないだろうと。正直漫才は漫才として楽しんでいるため別にパチファン三回戦という設定も別にいいっちゃいいのだが、漫才の最後に天野が泣くというストーリーを組み込んでくるのであれば、パチファン三回戦というストーリーも守ってくれなきゃ嘘でしょう。
 そういえば、私はこの漫才の最後に天野が泣くという脚本も正直好きにはなれなかった。漫才の最後にとってつけたように泣いてしまうのがあまりに唐突で理解が追い付かなかった。何度もやっているはずの漫才の、あまりに軽い、お前とはもうやってられないよという言葉一言で感情が決壊してしまうようなキャラクターではないと思ってしまった。もちろんアマゲン最後の舞台で色んな思いを抱えていることは分かっているのだけれど、だとしたら漫才中にももう少し別れをにじませてほしい。難しい要求ですね。オタクってワガママ。
(そういえば、さらに偉い上司が横から割り込んできたのっていつなのだろうか……パチファン前に一瞬未来と通信している描写があるけれど、あれで現代人に帰化していいって言われているなら未来があるって知ってるから泣かないと思うし……。三回戦のあと結果発表までの間かなと想定しても、じゃああの一瞬出てくる通信描写は何なの? って話ですし)

 愚痴は一通りまとめられたので、ここからは気づきを書こうと思います。配信流してて一つ気づいたこと言わせてね。おじいちゃんがロン!って言った後の現多さんの、「じじいがアガっただけだから」という台詞、テンションが上がったという意味だと思ってたんですが、もしかして1抜け的な意味のアガった……だったりします……?! 麻雀知らないからずっと間違った解釈をしていました。
 OP曲の「心滾り 肺溶かし」の部分、ずっと心滾り 灰と化しだったと思っていましたね……。心を灰にするほど燃やし尽くしたみたいなイメージでした。あんま意味変わりませんが。なぜか歌詞出たのって東京折り返し後とかだったから……。
 最初の配慮部分で天野がボケすぎてBGMが途中で切れるの狂おしいほど好きなのですが、そこイジったの1回しか見てないんですよね。大阪とか何も気にせずBGM消えたままボケ倒してた。マイページで好きです。
 天野の日替わりで一番好きだったの、桃みたいなおしりをぺ~んぺん! からの桃みたいなおしりをかじりむし! でかじろうとした回かもしれない。逃げたバンバンがかじろうとしました? しましたよね? →無反応→本当に嫌そうにこわごわとおしりを突き出す、が本当に面白くて。しかもそのあと、バンバンスルーして次の台詞言い始めてバンバンが本当に困惑してて、面白かったなぁ。そして次に好きだったのは、通天閣です。

 そういえば、だんだんアマゲンがちゃんと自己起票で日替わりでアイディア出ししてそれをちゃんと漫才で消化していて、すごく嬉しかったんです。やっと見たいものが見れそうって、大阪に来て初めて思った。
 最初の配慮部分で大阪ネタや旅行気分っていうのがあって、そこから栄養の五角形こうなってるからね→通天閣!とかがあって、最後の漫才でそうだ、京都に行こう!→今は大阪で頑張ろう?!といったやり取りがあって、そういう一貫したものを作ってきたのに私はすごく泣きそうになってしまった。ようやく、物語上でちゃんと生きてるって思えたから。これはすごく身勝手だと思うけれど、ただ面白いネタをたくさん入れて笑わせてもらうよりも、何か一貫したテーマや発想があってそれにまつわるボケをしてくれたほうがずっと、舞台上で生きてるって感動できて嬉しかった。
 前楽も大楽もケツで一貫してたけど、なんかアマゲンってどちらかといえばヨゴレ寄りの芸人だよねっていう原点回帰(?)が感じられてすごくよかったです。女傑は強かった。
 あと、天野の面白さって急にじじいになるみたいな唐突なキャラ変にあると思っているので(さっき唐突に泣くのがモヤるとか言ってた口で……)初日はずっとピザ屋の女の子一本だったけれど、千秋楽では女の子→じじい→女傑と出てきてこれぞ天野だよ~~と謎の安心感を覚えてしまった。そして最後にすん……と天野に戻る。大好き。

 主題歌、なんでタイトルが星屑ヒーローなんだろうってずっと考えてたんですよね。星屑はわかるけどヒーローがうまく理解できなかった。
 現多さんが湘南ハウスで育って芸人を目指し始めるのはきっとおじいちゃんおばあちゃんが現多さんにとってのヒーローだったからだし、「空からふわっと 何か降りてきた?!」と歌っちゃうくらい劇的な出会いをした天野も現多さんにとってのヒーローだし、「素敵なことを教えてくれたあなた」と歌っちゃうくらい天野にとって現多さんもヒーローなのだと思う。
 本当は困難に立ち向かう~くらいの意味合いしかないのかもしれないけれど、この不器用な男たちがお互い本気だからこそ喧嘩したりすれ違ったりするカミシモという作品で、主題歌にヒーローってつけるの、すごくいいなぁと思ったりなどしました。

 兎にも角にも、推し各位は舞台のスケジュールはうまく組んでください。二推しはずっと過密すぎて稽古不足に怒っていたけれど、最推しで稽古不足を感じたのは初めてだった。おそらく今まですごく頑張ってスケジュール調整してくれてたのだと思うし、そもそもすごく芝居の上手い人だから私が稽古不足を感じれなかったのかもしれないけれど、今回は露骨にそれを感じてしまった。最推しも二推しも、これからそういう思いをせずに幸せに観劇できることを願っています。

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