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2019年USオープン。試合後オンコートインタビューに嫌々参加した15歳が半年後に語ったこと

もうすぐUSオープンだし、大坂なおみ擁護派としての意思を表明しておくことにも意味はあるか。と念のため書くんですけど。

2019年9月1日、ニューヨーク。21歳が15歳を完封しました。
試合後のオンコートインタビューは勝者対応が通常のところ、勝った大坂なおみ(21、当時。以下同)に誘われ、負けたココ・ガウフ(15)も少しだけインタビューに参加、という珍しい光景が繰り広げられます。

これを指して「自分は負けたあとの記者会見をボイコットするくせに」「負かした相手を、しかも15歳という年齢のプレイヤーを強引にインタビューに同席させたことがあるんだぜ」って今になって揶揄する向きが存在し、ねえねえ(小声で)そういうひとたちと分かり合えるわけがないと思わない?

本稿は大坂なおみ擁護派として、そういうひとたちにすれ違いざまに何か言われたとき用の、「俺たちの心構え」のご提案になっております。
まず大坂なおみの当該行為が、われわれ日本人にどう映るかではなく、文化的背景を共有するUSの観客の目にはどう映ったか、を知るのがいいのでは。
そして、当事者のココ・ガウフがどう言っているか、を知るという順序。
先に本人の声を聞いても「業界の先輩に誘われたら断れるわけがないだろう」って感想になるかもしれないからね。どう、用意周到だろう。

実際ね、分かる気がするじゃないですか「負けたショックで今は何も言えない、こんないっぱい人が居る前で、みっともない自分の姿を見せたくない」って尻込みするココの気持ち。
でも動画を見れば、満員の観衆がココに大声援を送るシーンが、そこにはあるので心配は要らないのです。

なおみ姐さん「負けちゃった、ってロッカールームの隅でひとりで泣くより、あなたがどれだけ多くの人にすごいって思われているかを知ったほうがいいのよ」
そしてスタンドにいるココの両親たちを含むチームに向かって「すばらしい選手を育てましたね」。
アメリカ人、こういうの好きだよねえ。

なお、大坂なおみが今年の全仏オープン前に拒否したのは試合後の記者会見なので、そもそもオンコートインタビューとは別なことは留意しておきたい。
概して「敗因は何だと思いますか」「今日の敗戦で学んだことは何ですか」って質問ばっかり来るやつで、現にココはこの敗戦後にも会見に出ています。書き起こしは以下。

15歳相手だし、つい直前に感動的なシーンを見たし、でずいぶんマイルドな質問ばかりなのですが、当然「なおみに誘われて断ってましたね」って聞かれています。

何回も断ったけどしつこく誘われたの。私もずっとずーっとイヤって答えてたんだけど、最後は根負けして。じゃあ、って言ったんです。結果的には良かったけど。

ぐらいのニュアンスで答えています。会見の最初のほうで。
同じ類の質問を繰り返し受けるのがこういう場なので、その後も
「泣いてましたね。っていうかなおみも泣いてましたよね」って聞かれ「ねえ。なおみは勝ってるのに!(笑) 彼女が泣いて、私も泣いて、なんかみんな泣いてて」とかのやりとりも。そして会見最後にいわく、

本当にコートから逃げ出したかったけど、だって人前で泣きたくないし。でも自分の感情を出すことができたって意味で良かった気がします。アスリートも人間だから、良くも悪くも感情を持ってることを見てもらうことになったっていうか。なおみには感謝してます。

云々。
ここで私、変な感想を言うんですけど、この一連のココの回答、「俺たちが聞きたい答えに沿っている」印象を受けるんですよ。
彼女の真意を、この回のテキストだけで推し測ろうとするのは、無理がある。

そこで2度目の直接対決、2020年1月24日、全豪オープン。
ディフェンディングチャンピオンだった大坂なおみ(22)を返り討ちにするココ・ガウフ(15)。勝利記者会見がこちら。

「USオープンの対戦っていう特別な体験をしてきたなおみとあなたなので、ほかの試合とは違うって要素はありましたか」

みんな知ってる通り、なおみは静かな性格で、あのときまで私もほとんど喋ったことがなかったの。あの後、彼女がどういう人なのかが理解できたっていうか。とにかくあのことは絶対にずっと彼女に感謝し続ける、って私は言っていて。もちろん私には得難い時間だったけど、見ていたひとみんなにとっても素晴らしい時間だったと思うから。

あ、こっちは「言わされてることば」じゃないな。
よろしいか、ココは I'm forever thankful for that moment って言った。
今日はソコだけ覚えて帰ってください。

本noteのサムネイル画像はウエスタン・アンド・サザン・オープン対戦前のふたりが1勝1敗だったことを示す、女子テニス協会のウェブサイトのキャプチャです。
今大会でなおみ姐さんが2勝1敗と勝ち越したわけですが、テニス・ジャーナリズムが名勝負数え歌にしたがっているのに応える姐さんいわく、そうなるといいと思う。男子テニスのフェデラーvsナダルみたいな長く続くライバル関係になりたい。
2019年の出来事をお互い笑いながら振り返ることができる日が-なぜか日本でだけ変なヤジが飛び交うというようなこともなく-そのうち来るのだと思います(願望)。

an image from THE WTA TOUR

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