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「旅とスープ」

Ep3.
「旅とスープ」

皆様、旅はお好きですか?

家族や友達、恋人と行くのはもちろん楽しいですが、
個人的には1人旅の楽しさを知ってもらいたいなと
思っています。

美味しいものやきれいな景色を誰かと共有するのではなく、
「ひとり占め」するのです。


あなたは自由です。

何だってできるし、どこへだって行けます。

全て自分の気の向くままに、歩くことができます。




旅と食べ物は、切っても切れない関係にあります。

旅先では、せっかくならその土地の名産を食べたいですよね。

さらに旅を楽しむには、気になるカフェや宿泊先で、
地元の人のおすすめを聞くことです。

知らない人に話しかけるのはちょっと…、
そんな人も一歩踏み出してみると違う世界が
見えてくるかもしれません。

どうせここには、私が誰か知っている人はいません。
どんな自分にだってなれるのです。



寒い冬の旅にかかせないのは「スープ」。

大分県の山奥、とあるオーベルジュに宿泊したときのディナーのことです。

フランスの田舎に来たかのような心地よい空間で
私の前に現れた、舞茸と茄子の無水スープ。

素材の味がぎゅっと詰まっていて、
その濃厚さに衝撃を受けました。



自宅で作ってみようとしましたが
中々同じようにはいかないものです。
潔く諦めて、ひとまずオニオンスープを作り
バゲットを浸しました。


スープに関して、私が譲れないのは、
「あつあつ」であること。

冷製スープもそれはそれで美味しいのですが、
やはりあつくて湯気が立ち上るスープを
胃にゆっくりと流し込みたいのです。


それと、私は唐突にコーンスープが
飲みたくなる時があります。

とうもろこしの自然な甘みとつぶつぶの食感。
あれは定期的に摂取せねばなりません。

…ん?私だけかしら。

旅の話をしていたはずが、
私のスープ好きについての話になってしまいましたね。


さて、忙しくて旅に行く時間なんてない!という方。
そんな方におすすめの詩があります。

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食べ物のなかには

食べ物のなかにはね、
世界があるんだ。

一つ一つの食べ物のなかに
一つ一つの生きられた国がある。

チョコレートのなかに国があるし、
パンにはパンの種類だけの国がある。

真っ赤なビートのスープのなかには
真っ赤に血を流した国がある。

味があって匂いがあって、物語がある。

それが世界なので、世界は
食べ物でできていて、そこには
胃の腑をもった人びとが住んでるんだ。

テーブルのうえに世界があるんだ。(以下略)

――――――――――――――――――――
長田弘『食卓一期一会』より


今日、飲んだかぼちゃのスープ。
このかぼちゃはどこからやってきたのか。

私の住むこの街から遠く離れた場所から
どんぶらこ、と流れ着いたのかもしれません。

その大きなかぼちゃを切って、柔らかくつぶします 。
バターで玉ねぎを炒め、たっぷりの牛乳を注ぎます。

ぐつぐつ、コトコト煮込んだら
最後にそっと生クリームとパセリをのせていただきましょう。

飲み干してしまえばそれまでですが、
そのスープには誰かの生活があります。

もしかすると隣町の農家さんの野菜かもしれません。
「旅」は必ずしも遠くに行くことではないのです。




ある朝、私が体調の悪い日。

出勤しないと、と準備をしていると
料理上手な当時の恋人が、
黙々とキッチンで鍋をかき混ぜ始めました。

出てきたのはあつあつのミルクスープ。
「ベーコンから炒めて香りをつけるのがポイント」
だとか言っていたような気がします。

使っていた牛乳やベーコンは、私の家の残り物でしたが、
それもどこかからやってきた恵みです。

私のおなかに吸い込まれるまでに、
どんな場所を旅してきたのでしょうか。
恋人と食材に感謝して、ゆっくりと口に運びました。

優しさが身に染みた冬の朝、「おいしい記憶」。
スープに沈むたくさんの思い出は私を癒し、
温かい気持ちにさせてくれます。

ここではないどこかへ、旅をするということ。
食材を通して、知らない世界へとつながる扉。

スープをたっぷりと掬って、さあ、いってらっしゃい。

――――――――――――――――――――

~本日のおすすめカフェ~

「reynard」

完全予約制のカフェ。モーニング、ブランチ、アラカルト。
センスの良い空間で、フランスのビストロのような
魅力的なお料理の数々をいただける。
ふわっふわのオムレツがおすすめ。
(清水五条駅から徒歩7分)



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