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技能実習生は優しくて賢いお母さん達だったという話 その3

つづき


私が入ったとき、彼女たちのうち数人が、間もなく実習期間を終え帰国する予定であった。
帰国がもうそろそろかなという頃、Cさんに、いつが最終日ですか?、と尋ねると、「会社に(帰国)ダメって言われた……(  . .)」という答えが返ってきた。

よくよく聞くと、日本から母国へ渡航するには、出国前にPCR検査を3回受けなければならないが、その検査キットが日本で不足しているから、帰国はできないと会社のえらい人に言われたらしい。そして、仕事は続ける、いつまでかは分からない、と言う。(これは、簡単な日本語でやりとりして、それを私が繋ぎ合わせて解釈しただけなので、もしかしたら事実とは異なるのかもしれない。)

Cさんは「私の子ども、(電話で)いつも『お母さん、いつ帰ってくる?』言います」「……帰りたい……(。・・)」と言った。


私は家に帰ってからスマホで検索し、渡航前PCR検査を行っている指定医療機関のウェブサイトをいくつか見て回った。どこにも「PCR不足」の文字はなく、ウェブ予約のカレンダーには「予約可能」を示す◯印が並んでいた。

翌々日そのページをプリントアウトして持って行き、Cさんに「PCRある」と見せた。Eさんが「ありがとーう!」と喜んでいた。Cさんは休憩時間に大使館に電話をかけ、PCR検査が不足していないことを確認した。そして、「△△さん(職場の実習生担当の人?)に聞いてみる」と言っていた。


それから3日後、「◯◯さん(私)、私たち帰ります😊」とCさんが嬉しそうに報告してくれた。

帰国不可と言われたのが出発2週間前、それが撤回されたと私が聞いたのが9日前、一体何があったのかは分からないが、帰国予定だった数名は無事母国へ帰って行ったのだった。


追記 折しもコロナが蔓延している時期だったため、帰国後ホテルに2週間滞在しなければならず、一人10万円ほどかかったらしい。


おしまい