49 ついに直談判、対峙する日
直談判の日は夫が本当の出張で都内不在の日を狙った。待ち伏せをするのはZの自宅前と決めた。
「空振りすることも多々あるから、予行練習の気持ちで行ってください」
探偵の窓口のお兄さんからアドバイスをもらった。
狙った日は、Zが外勤の日。
わたしも仕事で朝からは張ることができず、午後休をとって昼すぎからZのマンションの前で待ち伏せをした。
待ち伏せをして少ししたらC子から連絡が入った。
「もしかしてもう帰っているかもしれない」
目の前のこのマンションの中にもしかしてZがいるかもしれない。
C子はどうにも心配になり、Zの部署の若手社員に動向を聞いてくれたそうだ。
「今日は社外で仕事なんですが、午前中に終わったようです。ただそのあとはどこにいるかは分からないそうです」
その足で既に帰宅したのか、まだ外にいるのか。
会社にはいない。けど足取りは掴めない。
改めて、人の居場所の特定の難しさを知った。
そうなると選択肢は「このまま待つ」一択。
外から帰るか、中から出てくるか。
三度、この現場で張った探偵からは外観から見てどの部屋かも聞いていた。夕刻になって部屋の明かりが灯れば在宅の有無を確認できる。
そして、そのまま時間は流れ夕暮れになった。季節は11月で外はひんやりと寒い。けどわたしは寒さを感じなかった。
じっと立って待つしかないわたしの元に大学の友達が携帯の充電器と飲み物の差し入れをしてくれた。
徐々に日が沈み、他の住居の明かりが灯る中…17:00あたりにZの部屋がぼんやり明るくなった。