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73 前妻へのメール、前妻からのメール

2人の人間から巻き上げた留学費用の真相については前妻に聞くしか手だてはなかった。

家の棚の奥に捨てずにしまわれていた夫の携帯電話を充電した。昔の携帯はパスコードなしで開くことができた。登録された名前から前妻を探し当て、電話番号を書き留めた。

まさかこんな日が来るとは夢にも思わなかったが、わたしは前妻の電話番号へショートメッセージを送った。

「突然のご連絡となり申し訳ございません。現在、妻の者です。この度、離婚することとなり伺いたいことがあり連絡させていただきました。
息子さんたちの留学費用としてお金を貸したそうですが、いくらでしょうか?
また養育費はあと2年で満了で間違いありませんでしょうか?
不躾な質問で申し訳ございません。
ご返答いただけますと幸いです」

しばらくすると返事が届いた。

「二度と連絡しないでください」

わたしはその一文ですべてを理解した。この人も被害者なのだ。きっとひどい別れだったのだろう。二度と名前も聞きたくない元夫の現在の妻よりメールが来たのだ。

わたしは申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、留学費用と養育費の真相については潔く諦めることにした。

ところがその晩遅く、再度前妻からメールが届いた。

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