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01 終わりのはじまり

そう、確かあれは晴れた週末だった。

まだお昼寝を必要とする次男を寝かしつけて、やっとベッドに置いてリビングに戻った。

お昼寝も、ましてや夜の寝かしつけにも関わったことのない夫が床で高イビキで寝ていた。

ソファでは小1の長男がタブレットでゲームをしている。ニヤリとわたしに笑いかけ「お母さん、一緒にゲームしようよ」と小声で誘ってきた。

同じ世界に入って行うゲーム。わたしは自分の携帯を開いたがどうにも通信不具合でうまくつながらない。

「じゃあお父さんの携帯を使おうよ」

長男はそう言うと同時に、寝ている夫の顔の横に投げ出された携帯をさっと取り、軽やかにパスコードを押して携帯を開けた。

「お父さんの番号知ってるの?」
「そうだよ、番号はあそこに書いたの。忘れないように」

リビングの端に置いてある木組のゴミ箱に小さく数字が書いてある。どうやらそれがパスコードらしい。

メモの場所に思わずクスリと笑ってしまった。

長男はお父さんの携帯を開いたらLINEをまず開いた。最近、流行っている「家族にLINEを送信」が始まった。

家族宛にありったけのスタンプや絵文字や変な日本語を送信するのだ。やり遂げた満足げな顔でいざゲーム画面を開けようとLINE画面から離れようとした時…

ふと知らない女の名前がわたしの目をかすめた。

naomi

「ちょっと貸して」

わたしはゆっくりと長男から夫の携帯を受け取りアニメの主人公のアイコンのnaomiを押した。

そのひと押しがすべての始まりだった。

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