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46 素人探偵、現る

最初の探偵では一回の宿泊、次の探偵では三回の立ち寄りの証拠。

これでZに慰謝料の請求をして、たとえ裁判まで行っても勝てる。

さらに夫は離婚を拒否する権利がなくなり、裁判でも勝てるところまでたどり着いた。

探偵の窓口のお兄さんに言われたように、夫を泳がせたまま、満を持してZへ直談判をしに行くことになる。

決行の日は夫が都内にいない「本当の出張」の日を狙うことにした。

どこでZを待ち伏せてどこで声をかけるのか。

A子と、この時には全てのいきさつを共有していたB子と綿密に協議した。

ワーキングウーマンで多忙極まるB子も、途中「ちょうどZの家の最寄りで仕事が終わったから家を見てきたよ」と現調報告をしてくれた。

分かっているのはZの職場と自宅。仕事のスケジュールもおおよそ把握はできている。

A子とB子は休みの日に、夫とZが勤める会社の最寄り駅で待ち合わせをした。駅から会社までの道を歩き、近くで待ち伏せができそうな場所があるか、声をかけた後に入れそうなカフェがあるかを、わざわざ足を運んで下見をしてくれた。

この二人の行動力には頭が下がるばかりだ。

またB子は、Zの自宅の近くのカフェの調査もしてくれた。何時まで開いているか、ネットの情報が正しいか、店内の間取りはどうか、など下調べに余念がない。

Zと面識があり顔が割れてしまっていること、またワンオペで二人の子どもを育てるわたしの代わりに探偵のように二人は動いてくれた。

おおよその下見のあとに相談員Kさんに現調報告をした。

相談員Kさんは言った。

「会社も悪くはないけど過去の事例で、声をかけたけど会社に走り戻って警備を呼んだパターンがあった。その場合、悪いのはあなたになってしまう。大きな会社ほどそのリスクはあるから、できたら自宅の方がいいと思う」

経験からくる的確なアドバイスをいただき、私たちは自宅に照準を絞った。

相談員Kさんはこうも付け加えた。

「自宅の場合、絶対に部屋には上がってはダメです。人のいる喫茶店で必ず話してください」

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