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07 消えた証拠が確実な証拠

長い間、夫婦の在り方について悩んでいたわたしが見てしまった夫と不倫相手のLINEのやりとり。

気持ちの妙な冷静さは、過去から地続きに伸びた夫への不満と疑念、諦め、悲しさ、あらゆる気持ちの集大成がゆえだった。

naomiとのLINEを見た翌朝。

昨晩は夫の携帯を盗み見するチャンスがなかった。出勤までの時間でチャンスはひとつ。夫の朝のシャワータイムだ。

若い頃から続けている夫のシャワータイム。

共働きで、子供を保育園へ送り出すまでの朝の時間は一分一秒を争うもの。何度も協力を申し出たけど、その習慣を崩すことはなかった。

のんびり起きてきて、ドカっとソファに座りテレビを見てコーヒーをすすり、ゆったりとした足取りでシャワーを浴びに行く。シャワーから出たらその足で出勤する。

保育園の準備も朝の送りも一度もしたことがない。

だからこそ、そのルーティンを逆手にとってシャワータイムを狙うしかない。

子どもたちは朝の番組に夢中になっている。そっと夫の携帯を持ち、震える手でパスコードをたたいた。

LINEを開いてみたが、いくらスクロールしてもあのアニメのアイコンもnaomiの文字も見当たらない。

トークごとごっそりと消せられていたのだ。

つまり黒。

見られてはマズイLINEだからこそトークごと消したに違いない。

消えた証拠が確実な証拠。でも証拠は消えている。ではどうしたら証明できるのか。

脇に流れる汗を感じながらも、ひとつの案が浮かんだ。

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