宇和海と段々畑
私が生まれ育ったところには段々畑というものがなかったので、なぜ段々にする必要があるのかなんて考えたこともなかったのです。
写真家栗林慧さんの“3D昆虫ドキュメンタリー”映画「アリのままでいたい」を劇場で観たとき、最後に流れてきたエンディングの曲に”段々畑”という言葉が聞こえてきてそこから強く意識し始めた記憶が。
愛媛県宇和島市で見たその段々畑には圧倒されました。
小さな集落にあるその風景は、一瞬、採石場のような異様な険しさを含んでいました。異様な、というのは人工的な風景だからかも。
”遊子水荷浦の段畑”
近くまで行ってみると、険しさはなくそこに人の営みがあることを感じれます。かなりの急斜面でとても細長く、少しカーブを描き、段々畑の特徴である石積みが丁寧な様子がわかります。
(農家さんはこの小型モノレール?で上に移動できます)
私が行ったときはほとんど作物は植えられておらず、畑のおやすみ時期だったのかもしれません、一部だけ馬鈴薯(じゃがいも)が植えられているだけでした。
宇和島地方は山が海にすぐに迫る地域が多いので、田畑が元々少ないようです。そこで、この急傾斜を段々にして畑にした。地学的な歴史があり、小さな石を一つ一つ積み上げ、畑としてかたち取る。食べていくため、生きていくため。
今のように重機が発達していなかった時代に、それが行われていた。
様々なストーリーがあり、いくつもの層がこの畑を作った。
そのことに、深い感動とただひたすら尊敬を私は隠せないです。
同じ宇和海に面している、真穴地区も同じく。ここはすべてがみかん畑で、ほとんどの山々がみかん畑なのであぜんとするばかり。
あぜんとするけど、この風景がとても好きなんです。
(あ、思えば自分はリアス式海岸がなぜか昔から好きである、と思い出しました。)
なにか豊かな感じがする。
(真穴地区のみかん山)
しかし残念ながらこのリアス式海岸という地形が、東日本大震災の津波で大きな被害をもたらせた原因のひとつでもあったんですが・・・。
この段々畑に重要な石積みのことを、そのうち少し深掘りしてみたいと思います。
(この畑の石積みは特別きれいでした)
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