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異邦人

自分は日々小さな世界で生きていると思っていました。
でもその日は立て続けに、今、住んでいる土地のダイナミズムみたいなものを見たような、最後まで家に帰り着くまで予測つかない1日があったのでそのことを書いてみます。いつにも増してオチがない記事となります。

バイトの通勤途中、昨年の豪雨災害工事でショベルカーがほぼ垂直の崖で作業をしていたんです。その近くには人もいました。どちらにも遠目でもはっきりわかるぶっとい命綱が見え、どうか無事に作業を終えてくださいと祈りました。合わせて自分も今日一日何事もありませんように。
と。

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そして、いつものように始まったお茶のバイト。茶畑の除草・茶摘みの前の諸々の作業なので常に外。畑のとなりは薮、雑木林。
茶の木をよく見ると、小さな虫たちは当たり前のようにたくさん生息しています。

よく見ると交尾をしていたりして、ちょっとした私のいたずら心でふーっと息をかけてもビクともしません。
アブラ虫を捕食するてんとう虫も忙しそう。
クモの巣もたくさんあり、何を捕食しているのか気になっています。
足元は歩き方を気をつけないと獣のフンを踏みます。タヌキめ!

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ふと、茶の葉に紛れた”それ”の模様が目に入りました。
あ〜?!あ、あれは確かそうにちがいない!
マムシ!!!

生きているマムシを実際に見るのは初めてです!興味を持ったこともありません!
でもマムシ情報だけは自然と入ってきていたので、それがマムシであるとすぐにわかりました。たぶん、冬眠明けなのか茶の木でひなたぼっこをしていたようです。
これはやばい!

「わああああ!さあ〜〜〜ちゃ〜〜ん!マムシ〜〜!」

84歳のさあちゃんは少し離れたところにいて、かつ、耳が遠いので私の叫び声が届いていません。

”マムシは棒で頭をポンポンってすると気絶する、もしくは簡単にお陀仏やで” とみかん農家さんに聞いていたけど、棒がまわりになかったため(いったんお茶畑に入ると身動きが取りづらいのです)、
なんと!私はとっさに自分の手で頭をポンポンしようとしました。


ばか・・・
マムシは体制を変え、とぐろを巻いたんです。
へ?
「とぐろを巻きましたーーー!!」と私は叫びます。

「あかん、飛ぶで。」

へ?飛ぶ? 
いつの間にかさあちゃんがいつの間にか近くにいてアドバイス。
OMG
マムシのジャンプ力までは情報がなかったので、猛ダッシュでその場からもがくようにどこまでも逃げる私。

しばらくしてから現場に戻るとマムシはおらず、またどこかで鉢合わせになるんじゃないかとずっとドキドキでした。
トカゲがカサカサと動くたびに、ビクッとします。


そして休憩。(左 さあちゃん。後ろからマムシに襲われないかドキドキしながら)

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休憩で座りこんだ場所の近くにイチゴハウスがあり、そこは猿がたった一晩でほとんどの実を食べてしまったという話が出たんです。
なんだ?蛇も猿も忙しいな、と思いながら聞く耳を立てます。

イチゴ泥棒にあったんじゃないかと思うほど、収穫できそうな見事に赤くなったものだけを食べ尽くされていた、と。大きなハウス4棟でしたが、何匹の猿がどっからやってきたんだろうか。でも確実に犯人は猿ということです。
一晩でそんなに大量にイチゴ食べるのかあ、ぜいたく!というか農家さんのショックは大きいはず。
猿がカゴを持ってきてお持ち帰りしたとは思えないが、もしかしたらそんな知恵もあるかもしれない。


無事、その日は無事にマムシに襲われることなく、猿にも遭遇せずに仕事が終わり、帰りに寄った公園での出来事。
そこは湧水源ともなっていて、今の時期はクレソンがモリモリしているので、夕食のサラダにするために寄りました。
あれ?地面がいつも違う、様子がおかしい。いたるところ掘り起こされている!人間の仕業じゃないことはすぐにわかりました。
見覚えがあります、茶畑で見たことがありました。

こ、こ、これは!猪が地中のミミズを食べるために土を掘ったあとです。いないよね?
と視界をあげたら20mほど離れたところから少し小さめの猪が私を見ています。双方見つめ合います。

来ないよね?君。

この緊張感を撮影したくて、思わずスマホを取り出したところ猪はマウント体制に(心の中ではシシガミ様助けて!と叫びます)

ぽーんと自分が弾き飛ばされる映像が吹き出しで出てくる余裕はありましたが、どうすればいいかわかりません。さっと、スマホを下ろして私はなにも持ってません!降参します!の合図、両手をあげました。


それが伝わったのかなんなのか、猪はさっと去ってくれました、時々私をチラ見しながら。

そのすきに車に戻り、さ!今のうちに逃げるぞ!と慌ててエンジンをかけて出ようとしたら、目の前にさっきの子が走ってきたではないですか!
何?遊んで欲しいの?
どうにもこうにも逃げれない八方塞がり。
やめてよ〜〜、軽自動車だけどがんばって新車で買ったんだから。
にらみ合うこと数分。(猪って多動だと思ってたけどこんなにじっとできるの?と思うほど)
仕方ないのでクラクションを派手に鳴らしたところ、近くの畑に走っていったんですが、私が脅したことで畑は荒らされたので持ち主さんには申し訳ない気持ちでいっぱい。

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ドキドキ、ぜえぜえ、息も絶え絶え(おおげさだけど)家に帰り、速攻で湯船にドボン。
カオスな感じの濃い1日がゆっくりと終わっていきます。

でも虫も、蛇も、猿も、猪もみんな本気で生きている。
生物である限り、自分の生が成り立ちいくように何者よりも有利に
捕食しようとあらゆる手立てを考えるのだ。
その日出会ったすべての生物は自己が際立っていた。
お前は?チャラく生きんなよ。かっこつけんなよ。
なんとなくそんなことを問われたような気分になりました。
何事ありませんように!と逃げてばっかでしたが。

お風呂のBGMはこれ。これしかなかったです。「異邦人」

いろんな方がカバーしてますが、ego-wrappinの良恵ちゃんバージョンが一番好き。




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