日本の山を守りたい、で、鹿のお話③ ここにも誤解編
ちまたで言われていることを信じ込んでいたら、実はあやまりだった、ということは、ないでしょうか?
情報源はあまりにも多く、自分で真偽のほどを確かめ、判断したいと思っても、そう簡単ではない。困難というよりも、もはや、絶望的な気分、という感じですよね?
鹿についても、大いに誤解していたことを気づかされました。
鹿が増えた理由を聞かれたことがあるでしょうか?
以下の3つが原因、と説明されることが多いようです。
①温暖化
②狩猟者の減少(高齢化)
③オオカミの絶滅
ですが、データを検証すると、この3つとも、鹿(野生生物)が増えた真の原因ではないと考えられるのでした。
それぞれの詳しい理由は『鹿と日本人』田中淳夫にもありますが、ここでは、ごく簡単な説明にとどめましょう。
①大雪による鹿の大量死は、減ったかもしれない。
ただし、鹿の頭数は全国的に増えている。
鹿の増えた場所が、雪の影響を受ける場所とは限らず、鹿の増加と温暖化による積雪量は、直接、関係していない。
②狩猟免許をもつ人の数は、古くは統計が整っていないとはいえ、最多は1970年前後。
それ以前の時代は、現代よりも人数が少ない時代が続いていた様子。
しかも、害獣とされる動物の駆除数を1990年と2014年で比較すると、
狩猟者数は10万人減り、鹿の駆除数は、42,000頭から588,000頭に増加。
理由は、ワナを使って捕獲していることもあるでしょう。
とすれば、狩猟者が減ったから野生生物の数が増える、とは、ならないですよね。
③オオカミのいた江戸時代も、獣害はかなりひどく、人々は相当に苦労していたことが知られている。
オオカミがいても、必ずしも獣害の抑制にはつながっていなかった様子。
ちなみに、ニホンオオカミは体が小さく、成獣は、体重が15㎏、体長は1m程度。日本の犬で言えば、中型犬くらい。
一方、鹿は、成獣の平均が、オスが体長1.5m、メスは1.3m、体重はオス80㎏、メス45㎏。
確かにこれだけ体格に差があれば、オオカミが鹿を狩るのはそれほど容易ではないはず、とうなづけます。
では、鹿に限らず、野生動物が増えた最大の理由は?
私は聞いて納得!だったのですが、餌が増えたこと、と考えられています。
農業では、日本は品質基準がおそろしく厳しいので、出荷に適さない作物は畑の周辺に捨てられています。
また、過疎化で放棄された柑橘類や柿、クリなどの果樹園なども、今はたくさんあります。
そして、農地ばかりでなく、都市部に住む私たちの身の回りでも、実りの季節には、梅や柿、ヤマモモなどなど、多くの食べられる果物が、採られることなく、落下して放置されているのは、最近、よく目にする心の痛む光景…
これを見ても、農山村で野生生物の餌が豊富、というのは、納得できる気がします。
実際のところは、鹿などの野生生物が増える、そして、人里まで降りてきて被害を与える理由は、複合的なのではないか、と思います。
ですが、思い込みで、違う原因に対して懸命に対策をとり続けるのは、避けたいです。
できるだけ、事実を知ろうとする、まずはその姿勢からスタート、な気がしました。