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この写真から、何が読み取れるでしょうか?

大学で「樹木医学概論」という科目を担当していますが、できるだけ、講義の際に、学生に自分で考えてもらうきっかけを作りたいと思っています。

この写真は、そのために使ったものです。

目の付け所を少し学び、見方がわかってくると、1枚の写真からだけでも、いろんなことが読み取れるようになります。


さて、この写真をみて、どこに目が行く? 何が読み取れるでしょうか?

ちょっとやってみて頂きたいです。

そして、以下の説明文をご覧下さい。

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広々とした公園内に、大切に保存されている立派なシダレザクラ。

花の時期は、とてもきれいですよね。

ですが、何か気になることはないでしょうか?

この樹木と、この木の周囲をよく見ると?

まずは木から見てみましょう。

シダレザクラの枝は、ダラリと垂れ下がるもの、と思っていませんか?


実は、健康なシダレザクラの枝は、湾曲しながらも、上方に立ち上がって伸び、それから枝先が下垂しています。

ところが、この樹木には、そういう立ち上がる枝がほとんど無くなっています。

特に上の方の枝の先を見てみて下さい。枝先に枯れが目立ちますよね?

ということは?

最近、順調に枝を伸ばせていないことを示しています。


それは、なぜでしょう?

ヒントは、この木の周りの土壌に表れています。

木の周りの土は、芝生がはがれて裸地化して、部分的に削れてしまっています。

この写真には人は写っていませんが、この木は大変な人気者で、日頃から木の周りには、いつも人が集まってきます。

開花期の休日は、カメラマンが大勢集まってきて、この木の周りで写真を撮っているそう。

そういうことの積み重ねの結果、土が踏み固められたり削れたりして、根が呼吸困難に。

それで、水も養分もうまく吸い上げられなくなって、枝が枯れてくる。

そういう状態を示しています。

この状態を改善するには、樹木の周りに柵をして、人が根元の土を踏まないようにしてあげる必要があります。

締め固まった土壌には、根を傷めない方法で、小さな穴をたくさん開けてあげると、もっとよいです。

そうしてもらえるように働きかけていますが、どうなるでしょうか?

木も人も笑顔で、と願うのは、このような場面です。

木にあまり負担をかけてしまうと、花も見れなくなるし、枝が次々と枯れると、危険にもなります。

木のためにできることをやりながら、お花を長く楽しめるといいな、と思います。

それから、元気なシダレザクラの、躍動感あふれる枝の状態を知っていると、この木が問題を抱えていることに、早い時期に気づけるようになると思います。

樹木の場合も、よいものを知っておく、って、とても重要なことなんですよね。




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