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きしぉう博士のアジア研究ノート

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きしぉう博士が書いたアジア研究や歴史学関連の2020年10月から2021年1月までの有料記事の全てが読めるマガジンです。
アジア研究、特に東南アジア研究の前線の話がかじれます。 それから、大手の出版局・大学出版局から本を…
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#社会学

講義用ノート コミュニティ形成の東南アジア史(1)シリーズ概論

本業です。シンガポール国立大で教えている大学2・3年生向けの「東南アジア史入門」の授業をコミュニティ形成史として作り直し、日本語の講義用ノートを作る計画です。ちびちびやります。域内の研究もできるだけピックアップしていきますが、東南アジア研究の系譜的には、ビクトール・リバーマン → マイトリ・アウントゥイン → 土屋、あるいはD.G.Eホール → オリバー・ウォルターズ → レイナルド・イレート → 土屋です。なので、基本的にはミシガン大及びコーネル大系列の伝統に基づいて(多少

書評:アンドレイ・ダマレードのDivided Loyalties: Displacement, Belonging and Citizenship among East Timorese in West Timor

※私の学術書の書評では、著者の意図を重視した作品概論、内的・外的な批評、そしてどうしたらさらに良い本にできたかなどについて同じ研究者の立場から書いています。 ーーーーーーー 作品概論アンドレイ・ダマレードのDividied Loyalties: Displacement, Belonging and Citizenship among East Timorese in West Timor(分裂した忠誠:西ティモールの東ティモール人たちの追放、帰属意識、市民権)は彼のオー

ミャンマー研究の雑誌がマレーシアの社会学者の特集をやるということ

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アラタス講義録(1)自律的社会科学伝統、囚われた思考、模倣型の研究

内容エドワード・サイードが絶賛したマレーシアの社会学者、サイド・フセイン・アラタスのシンガポール国立大学での晩年の講義録の日本語訳です。 問題提起 囚われた思考1950年代初頭、つまり私がアムステルダム大学の学生であった頃から、私は直感的に世界中のたくさんの地域における自律的社会科学伝統の必要性について考えてきた。ちょうどその頃、イブン・ハルドゥン(Ibn Khaldun)の著作を読み、芸術家なくして芸術が発展することはできないということを教わった。同様に、自律的伝統も、そ

アラタス講義録(3):研究の重要性の基準、自律的社会科学、ごますり性の社会学

第一回(https://note.com/kishotsuchiya/n/ne52daa22dc9e) 第二回(https://note.com/kishotsuchiya/n/n883eab4dbf7f) に続く最終回です。以下が講義録です。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 研究の「重要性」について 虚無主義的な潮流の影響力は過小評価するべきではない。社会科学において、それはさまざまな形をとってきたが、その一つは「重要性(significance)」の無視である。