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4年「よわむし太郎」【善悪の判断】の指導案はこうする!

こんにちは。
今日は『4年「よわむし太郎」【善悪の判断】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。

「よわむし太郎」は定番教材です。
定番教材は、これまでに多くの実践をされてきているので、
授業の展開案は山ほどあります。

定番教材は多くの実践ができるぐらい、
道徳的価値が詰まっている教材です。

この記事で、さらに「よわむし太郎」についての視点を広げましょう!

では、解説です!

1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ

順番に解説します。

1 教材について

A 主として自分自身に関すること
「善悪の判断、自律、自由と責任」
3・4年の目標・・・・正しいと判断したことは、自信をもって行うこと。

4年生「よわむし太郎」(日本文教出版)

あらすじ
昔、ある村に「よわむし太郎」とよばれる男がいました。
よわむし太郎は、背が高く力もあるのに、子どもたちにからかわれて、いたずらをされていました。
ある日、狩りが好きなとの様がやってきて、子どもたちが大事にしている池の白い鳥をつかまえようとしました。
しかし、よわむし太郎はとの様の前へ立ちはだかり、大きな涙をこぼしながら鳥を助けるように頼み、最後まで鳥を守った。
それから後、「よわむし太郎」という名前は村から消えてしまいました。

2 内容項目と教材

①軸はなにか考える

「善悪の判断、自律、自由と責任」は、次の3つに分けて考えます。
A善悪の判断
B自律
C自由と責任
それぞれ、似ていますが解釈が異なるので、
今回授業をする教材が、
A~Cのどれに当たるかを考える必要があります。

「よわむし太郎」はどれだと思いますか?

よわむし太郎は、子どもたちにからかわれても何も言いませんでしたが、
殿様にははっきり自分の意見を言えました。

ここに、この教材のポイントがありそうです。
よわむし太郎は、人によって態度を変えることなく、
自分の信念に沿って判断をして行動したのです。

つまり、A善悪の判断がしっくりきそうです。

では、『善悪の判断』で考えていきましょう。

②よわむし太郎は人によって態度を変えていないか

よわむし太郎は、子どもたちにからかわれても、
言い返したり、注意したりすることはありませんでした。

しかし、殿様には間違っているとはっきり言いました。

これは、「人によって態度を変えている」と言えます。
つまり、よわむし太郎は、「弱虫」なのではなく、
「人によって態度を変える」性格なのではないか。

こう聞いたら、子どもはどんな反応をするでしょうね?
教材の一部分を切り取り、ひとつの理論を組み立てて
このように発問としてぶつけてみると、
「あれ? そう言われればおかしいな?」という感覚になります。

そうなると道徳の思考の始まりであり、立ち止まって考えている証拠です。

・人によって態度を変えているのはおかしいな。
・正しいことは誰に対しても言わないといけないんじゃないかな。
・殿様にも言わないか、子どもたちにも言うか、どちらかが正しい行動じゃないかな。
・正しいことをするってどういうことなんだろう。

このような思考が個々に生まれ、
「正しい行いをするときに大切な心」について考えるようになります。

③よわむし太郎は弱虫なのか

題名にもなっている「弱虫」は、軸にしたいキーワードです。
そもそも弱虫とはどういう意味でしょうか。

気の弱い人。意気地のない人。(goo辞書)

つまり、人から見ると、何も言わないし頼りがいのない人ということです。

よわむし太郎は、体は大きいし、力も強いですが、村の子どもからはからかわれていました。
外見ではなく、内面を子どもたちは見ていたということです。

では、からかわれている時の「よわむし太郎」の心境はどうだったのでしょうか?

ヒントとなるセリフで、
「子どものことだもの、しっかたねえさ。」とあります。

子どもはいたずらをするもの。
子どもは思ったことを素直に言うもの。
子どもは正直で素直なもの。

そういった、子どもの純粋な心を「よわむし太郎」は知っていて、
あえて注意せずのびのびと遊ばせていたのです。

つまり、よわむし太郎は子どもから見ると弱虫ですが、
よわむし太郎から子どもを見ると愛すべき存在だったのです。

その感情は伝えていないし、おおらかな太郎の性格のため、
「よわむし太郎」という名前が定着したのでしょう。

④白い鳥への態度

もう1つ考えたいことは、よわむし太郎の白い鳥への態度です。
本文ではさらっと書いていますが、よわむし太郎も白い鳥の世話をしていたことがわかります。

よわむし太郎はなぜ、鳥の世話をしていたのでしょうか?

A 鳥が好きだから。
B よわむし太郎が好きな子どもが、かわいがっている鳥だから。
C ひまだから。
Cは捨て選択肢としても、AかBかは迷うところですね。
あなたはどちらだと思いますか?
子どもたちと考えてみたいところです。


わたしは、Bではないかと考えます。
その後、との様が鳥を狩ろうとして止めた理由ともつじつまが合うからです。


との様の前に立ちはだかった時、
「子どもたちが悲しみます。」と言っているので、
白い鳥は子どもたちがかわいがっているもの、
だから子どもたちを悲しませたくない!という感情が先に出ています。


そうでなければ、「村の大切な鳥です。」とか「鳥たちがかわいそうです。」と言ってもおかしくないのではないでしょうか。


しかし、よわむし太郎はそうは言わなかった。
このことから、よわむし太郎は、子どもたちがかわいがっているという大きな理由で鳥の世話をしていたのではないでしょうか。


つまり、よわむし太郎は村の子どもたちを、それだけ大切に思っていたということになります。


⑤正しいことを行う心だけでいいのか
とてもえらい立場のとの様であっても、正しいことを言うのは勇気がいります。
「正しいことだから、立場がどんな人でも言うべきだ。」という結論は、
現実的ではありません。


・街中で、サングラスをかけて入れ墨をいれた大柄な男の人数名が、禁煙区域でタバコを吸っていても注意をできますか?
・校長先生が「急いでいるから」という理由で、廊下を走っていたら、注意できますか?
正しいことを言うには、「正しいから」という理由だけでは不十分で、
そこには規則や自分の信念、守るものなどといった他の理由も必要なのです。


では、よわむし太郎は、正しいことを行う心に加えて、何があったのでしょうか。
子どもたちと考えてみたいですね。


⑥よわむし太郎は「弱虫」なのか

よわむし太郎は、「弱虫」なのでしょうか。
議論を重ねると、子どもが最初に思っていた「弱虫」とは概念が変わってきていることでしょう。

・何も言えない。
・何も言い返さない。
といった弱虫の概念が、よわむし太郎によって覆されたのです。

◯よわむし太郎は「弱虫」なのか。
◯よわむし太郎は、◯◯太郎になったのか。
この発問から、よわむし太郎の見る目が変わったことを実感できるといいですね。

このように、定番教材は考える足がかりとなる場面がたくさんあります。
全てを扱う必要はありません。
授業者が大事だと思う部分を選んで実施してください。


「この授業では、どの場面を扱うのが正解なのだろう。」
という考え方ではなく、
「クラスの子どもたちには、どの場面を扱うのが必要だろう。」
という考え方で授業を組み立てましょう!

3 導入

T:教師 C:子ども

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