とじる、かがる、ぬう
〈1809字〉
来週8月22日(木)は、いよいよ、先日収録したり、作例を作ったりした、
すてきにハンドメイド、の放映です。
これまで、noteでは、音読のことだけ書いていたんですが、この機会に本業の製本についても書いて行きます(自分のウェブサイトに書いたものです)。
放映は
すてきにハンドメイド
日本の伝統手芸 和とじ本
Eテレ 8月22日(木)午後 9:30~9:54
総合テレビ 8月28日(水)午前 11:05~11:29
Eテレ 8月28日(水)午後 2:45~3:09
大河ドラマ『光る君へ』とのコラボ企画で、ゲストは藤原実資役のロバート秋山(秋山竜次)さんです!!!(撮影楽しかったな〜。どういうふうに編集されたかは、心配)
さて、だいぶ前にも書いた通り、古くからの和本の製本方法を紹介します。
で、準備経過を書いたこの時には「のど」っていうことばの使い方で悩んでいましたが、実は、あのあと、綴じの呼び方を「綴葉装(てつようそう)」から「列帖装(れっちょうそう)」に変えました。この技法には「大和綴じ(やまととじ)」という呼び方もあります。この問題については前々から知っていましたが、習慣的に「綴葉装」を使っていました。
製本教室の生徒さんからの指摘とか、書誌学系の本を紹介していただいたりして、列帖装の方がいいのかな、と、変えることにしました。
その時はシンプルにどれがより正しいだろう?と悩んだんですが、ことばの内容を考えると結構面白いです。
意味を表現してみると、
●綴葉装
葉(ページ一枚一枚を表すことば)を綴じた装(=つくり)
●列帖装
帖(何枚か重なった紙を二つ折りしたもの)がいくつか並んでいる(列)装(=つくり)
ということになるかと思います。
これで思い出したのが、
本を糸で「綴じる(とじる)」のか「かがる」のか「縫う(ぬう)」のか、っていう問題。
まあ「本を縫う」というふうに普通は言いません。
が、作業の説明ではけっこう使うんですよね。なぜか?と考えたら、「綴じる」は意味が広すぎるんだな、と思い当たりました(「かがる」はここではちょっと置いておきます。余談ですが「縢る」っていう漢字難しい)。
「綴じる」は
平綴じで貫通穴をあけて紐を通す場合も、
中綴じの本かがりで綴じる場合も、
さらには無線綴じなど、糸使わないで糊だけでやる製本の場合も使います。
というわけで「綴葉装」だと、本であるならば全て「綴」「葉」だよね、と言えちゃうので、一つの特徴ある技法を表す語としてはいかがか、という(書誌学者さんの)説得だったので、それに乗ることにしました。
問題は「綴じる」の多義性にあったか、と今書いてみて、納得感が出ました。
さて、もう一つ。「かがり」ということばもいつも気になっているので、ちょっと考えてみました。
これ、別の意味で曲者なことばです。
手製本では「本かがり」という「中綴じ」の作業を「かがり台」という道具でやる、という場合以外にはほぼ使いません。
ただし、この作業はとても重要な作業なので「かがり」って良く使うことばなのです。
「本かがり」のことを「本綴じ」とは言いませんが、「糸綴じ」とは言い、「糸かがり」とはあまり言わないです。
道具は「かがり台」であって「綴じ台」とは言わないです。
「かがり」は「綴じ」とは違って多義性が低い、かなり限定的な語です。
と言いつつ「かがり綴じ」という、本かがりとは無関係な技法に「かがり」がついてる例を思い出しました。
「かがる」というと布の作業で破れを直したりする感じかな?とふわっと思ってました。
あらためて意味を調べると「かがり縫いをすること」だそうです。
それで、かがり縫い、を調べると、ああ!パッチワークというか、布を当てて縫い付ける、この技法のことね、と、そのイメージが掴めました。
手製本の「かがり綴じ」の命名が、これでさっと理解できました(のどに近いところに穴をいくつもあけて、その穴をぐるぐる回るように糸を通していきます)。
勝手に定義的に言い表すと
「二つの布を外側を回ってつなぐ縫い方」
になるかな、と思います。
そう書き表すと、本かがり、という手製本の作業もそのイメージの中に含まれているのが理解できます。
ちょっと勉強になった気分。
ちなみに、「本かがり」の「本」はbookの意味ではなく「真正の」という意味です(「本」も本当に多義的な語です)。
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