見出し画像

公立病院改革3〈2006年〉東北170床 公立F病院(4)

さて、やったこともないし、やっているところを見たこともない「全適化」を実行するために、仕方ないので勉強した。

病院の全適化は全国あちこちに事例はあるのだが、全適化というのは条例を変えるという行政内手続の話だから、実は私にやることなどない。
民間人が行政内手続をする必要もないし、手続そのものには、依頼者のニーズは無かったと思う。

あとで思えば、全適にする条例改正は当然行政サイドの実務として。
我々はアドバイザーとして、その後の病院事業管理者の業務の進め方、人事労務管理の改革、市・本庁との連携など、本当の実務を助言すべきだったのだろう。
(当時の私の経験では、そのどれもできないものであったが 苦笑)

でも当時は、そんなことも分からなかったので、やらなきゃ、やらなきゃ、ということで条例改正の実施方法を調べて、説明できるように整理を進めていった。

そしてある日、全力で勉強して整理して、まとめた結果を先方に電話をして「条例を改正する為の要件と方法」を伝えたところ。

「違いますよ、何も分かっていないんですね~

 我々は事務組合だから『条例』でなく『規約』改正なんですよ!
 また事務組合では、全適化すると「・・・組合」→「・・・企業団」と名称が変わり。
 就任するトップの呼称は、事業管理者ではなく「企業長」という名称を使うんですよ!」

と、、ドヤ声で言われてしまった。
先方にしてみると、何も分かっていないコンサルを入れてしまった、という気分だったのか、どうだか。

なんだよ、分かっているんだったら我々に尋ねるなよ・・・と思ったが。

そういうことは、いちいち教科書には書いていない。
(「公営企業の実務講座」というマニアックなQA集に、確か記載されている)
だから勉強になったという点では、後にも非常に役立つ勉強になったのは確かだ。

確かに、この病院は二市で構成されている一部事務組合の病院だ。
そしてそもそも、この事案は、いつも二市で費用分担を巡ってケンカばかりしてきた結果、債務も課題も先送りし続けてきた結果、大きいほうの市長の専決処分で、私たちに業務依頼してきている事案である。

そういえば、初めてコンサルで入った北陸のKN病院も、一市一町で構成される、一部事務組合の病院であった。
実務上何の影響も無かったので意識しなかったが、KN病院は二つの自治体がボチボチ仲良くやっていたから、そこは何のテーマにもならなかったのだろう。

【一部事務組合とは、複数の地方公共団体(市町村、特別区など)が行政サービスの一部を共同で行うことを目的として設置する行政機関で、地方自治法284条2項により設けられる。一部事務組合のうち地方公営企業の事務を共同処理するものは企業団という。一部事務組合の長は管理者または理事会、企業団の長は企業長である。
特別地方公共団体である地方公共団体の組合の一つである。(Wikipediaより)】

この病院が一部事務組合であったことによって、業務終盤に壮絶なドラマが生まれていくことは、このときは知る由も無かった。
ともかく、一部事務組合であるということは普通の自治体ではなく「特別地方公共団体」であり、運営規範は条例でなく「規約」であり、全部適用によって「企業団」となるのである。

一般的に民間人にはあまり関係ない話だが、この後、僕は数件の「一部事務組合解散、組織再編」業務をする機会があったため、公立F病院でのこの出来事はこれ以上ない実務経験となった。

かくして、当方は無知・未熟を露呈しただけの全適化局面を終えて、公立F病院は組合議会の手続によって、無事に全適化を完了した。
しかし、一見何の役にも立たなかった私だが、あとで考えると「市長が専決処分でコンサルを連れてきてしまった」という事実が、全適化を後に引けないものにしていた。
その点で、私がそこにいたことが、全適化を確実に既定路線化するために必要なものパーツであった気がする。

そこで何の仕事をしたかも大切だが、「そこにいることに大きな意味ある」仕事もある、ということも、この業務全体を通して深く学ぶこととなった。

通い始めて1ヶ月半で、何だか締まりのない形で全適化フェーズを終えたが。
時間は止まらない、次の「業務分析」「業績改善」のフェーズが始まることとなる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?