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公立病院改革3-9【診療圏3 分析と実地調査】〈2006年〉東北170床 公立F病院

現地での二日間は、2人でずっと車移動しながら、医療圏内の病院、主だった診療所を回っていった。

Y氏からは、まず診療圏分析や商圏分析の、基本的な原理を教えていただいた。


地域マーケティングは、人の流れを数的、視覚的に把握することが主眼で、地域の人口動態や、保険診療の受療動向等をベースに、患者の流れ方を分析する。
この基本原理は当時も今も変わっていないが、この頃は、地図上の移動距離や所要時間の算定には、カーナビゲーションを改良した分析をソフトが使われていた。


当時は我々医療コンサル側には、診療圏分析を『作る能力』が問われたが、いまは作られた分析に対して、考察を加える能力が問われている。
その考察には、地場産業である医療が各地固有に持っている特質、交通動線、政治・行政事情などの整理が含まれる。

そうした分析作成のプロセス・思考方法を教えていただいた事は、その後の医療人生に大いに役立つこととなった。

その後、Googleマップの登場、普及を始め、ネット社会は大きく激変して、診療圏分析のデータベースや方法も変わっていったが、分析に必要な知見や視点は、基本的に変わらないと感じている。


車で目的を持って地域を回ることで、様々なことに気づかされる。

まず、正面の地図から読み取りにくい事象が、目の当たりになることである。



我々が通っている病院は、比較的、人口や商業集積のある地域に所在しているが、その圏域では、ずっと北にある別の病院が人気だ。
地図上、人気の理由は『2つの国道が交わる』交通上の要所に所在していたからだ、と想像していた。

しかし、その場所に実際に行くと、そこは山の中で、国道とは名ばかりの細い道路が交わっているだけであった。

我々都市部の人間がイメージする「国道同士の交差点」とは全然違う、田舎の細道が交差する、その奥の高台に病院が経っていた。

この病院の人気があるのは、別に、交通の要所にあるからではなかった。
そこが地元では知られている名湯がある観光地であったからだ、と分かった。


湯治場的に慢性期病院があったところを、いまでいう医療ツーリズム(ともちょっと違うが)的に、外来や救急も取れるように、政策的に誘導していたのである。

こういうことは地元の人たちには「言わずもがな」かもしれないが、我々の立場で提言を出していく上で、我々自身で視認する意味は大きい。

その後、各地を回る中で、観光地と医療施設が密接な関係にあることを知ることになる。

次回は診療圏分析の最後、成果品の元となった「ハフモデル分析」を紹介してみる。


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