生涯学習note2020.04/22

本日「誓い空しく」再発!

 30年近く前、私が24歳から26歳の時にかけて作ったコンピレーション・アルバムが本日(2020年4月22日)再発になります。私はアルバム全体のプロデュースと、コンスタンス・タワーズというバンド、そして、どくろ団という、このアルバムに収録されている「野球王国」を録音するためのユニットで参加しています。

このアルバムが作られた背景と、2020年から振り返ってみた考察を、何回かに分けて試みたいと思います。

アルバム基調情報

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タイトル「誓い空しくIncomplete Deluxe Edition」

アーティスト名 / 京浜兄弟社

●3,630円(税込) ●レーベル SUPER FUJI DISCS  ●規格番号 FJSP389 ●国(Country) JPN  ●フォーマット CD 組数 2

特典詳細情報
★ディスクユニオンオリジナル特典"常盤響 画ポストカード"付き★
常盤響 画「ポストカード」
表面「誓い空しく」ラフ
裏面「アイカワMEGA MIX」

※特典は無くなり次第終了となります。

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 以下のサイトに全曲のアーティスト/タイトル詳細があります。また通販の申し込みも出来ます。91年発売のオリジナル版の「誓い空しく」に加え、92年にカセットテープで発売されたアウトテイク、別ミックス集「スナック・オー・トラックス」を加えた二枚組仕様となっています。購入特典のポストカードに描かれたジャケットのラフ画(上記)では、漫画「漂流教室」の未来植物が、かなり分かる形で描かれていますね。また最初のアイデアでは灯篭の周りを盆踊りしていたのが、ビートルズのジャケを燃やす焚き火(「More popular than Jesus」事件の引用、トッド・ラングレン&ユートピアの「 Swing To The Right」ジャケ参照)に変わっているのが確認できます。本編のジャケに登場する様々なロック・アイコンについては、各自、読み解いて楽しんで下さい。

 ジャケットに描かれたキャラクターは、カエル仮面と呼ばれていました。着ぐるみの歴史において、人間の目が露出しているのに、キャラクターの側にも目が描かれている、という二重構造が、80年代以降に顕著になっていきました。それまでは、熊にしろ、ペンギンにしろ、それらの動物や架空の生物になりきる意匠としての着ぐるみが主流で、中に入る人間の目と、仮装されるキャラの目は一致させる、もしくは、見えない穴から人間の目は視覚を確保する形式でした。中に入る人間の目は、外からは隠されていたのです。仮装の意味合いが変わっていったのは80年代で、79年放送の『欽ちゃんの紅白歌合戦をぶっ飛ばせ! 第1回全日本仮装大賞〜なんかやら仮そう!〜』以降の影響が強いと思われます。

 我々が音楽を作り始めた時代は、すでに様々な音楽的実験やイノベーション、ジャンルの横断や越境が一通りやり尽くされた、いわゆる焼け野原の状態で、そんな中で、再度、歴史をメタ的に構築しようと試みたのが本アルバムの基本コンセプトです。ジャケに描かれているアイコンのひとつ、レジデンツは、音楽史の再構築を試みた運動のひとつです。自分たちはさらにその息子世代で、ロックの通史からすると曽孫世代にあたります。レジデンツが「単眼」で試みた視座を、さらにメタ化して、仮想と仮装の二重化を試みる、ステージ上で怒り狂ってみせても、ステージ上で怒り狂っているキャラを演じているようにしか見えない時代に、素朴や素直といった逃げ道を通らずに、いかにオーディエンスに誠実に作品を投げ込めるか? そうだ!あらかじめ目が露出しているのに、あえてキャラにも目を描く、4つ目だ。そんな事を考えていました。おっと、アルバムの基調情報から逸脱して、ジャケの解説をしてしまった。続いて91年に発売されたオリジナル版の「誓い空しく」について解説していきます。


オリジナル版「誓い空しく」

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Various ‎– 誓い空しく
レーベル: K-Hin Bros. ‎– KBS #501
フォーマット: CD, Album, Compilation
国:Japan
リリース:25 Sep 1991
 写真はインサートの裏ジャケットと盤面です。映画「猿の惑星」のラストのように、大仏が砂浜に朽ち果てています。遠い未来の出来事なのでしょう。盤面のアイコンは十二支の動物たちで、プレイすると高速で12年間が巡り、最後までプレイすると56億7千万年後に弥勒菩薩が現れるという仕様です。果たして一切衆生を救おうという弥勒の誓願は成就したのでしょうか? 誓い空しく!!

収録曲とアーティストについては次回以降に解説していきます。このアルバムの完全再発収録を含む全10枚組として2015年に発売された「21世紀の京浜兄弟者」(これについても次回以降に解説)のティザー(予告映像)で、各曲の抜粋が聞けるので、ひとまず聞いて予習しておいて下さい。

 このティザーは、「正しい数の数え方」映像チームの杉山慎一郎くんと一緒に作りました。まだ字幕の載せ方がよく分かっていない頃ですので、読みにくくてすいません。残されていた当時のライブ映像に、レコーディング音源を無理やりシンクロさせる、という手法を採っています。我々は家庭用のビデオカメラの黎明期から、ライブ映像を記録していたので、膨大なVHSやベータのビデオテープから、アルバムに収録されている該当曲を探し出し、その曲の該当箇所に画を当てています。ですので、ほどほどリップシンクして見える。このライブ映像の探索と抽出に、まず3ヶ月ほど掛かっています。ライブ映像の無いものに関しては、当時のフライヤーやスチールを使って構成しました。 冒頭の「野球王国」の映像は、私が加藤けんそうくんらと一緒に作っていた「野球刑事ジャイガー」という8ミリ映画シリーズの三作目「野球死すべし」のミュージカル・シーンから流用しています。8ミリ映画で歌詞がリップシンクするミュージカル・シーンは、あまり無いと思います。この作品は観られないのか?というリクエストをたまにもらいますが、イマジカでテレシネしてDVテープに変換するところまでは終わっています。セリフや音楽の一部がカセットテープなので、それをミックスし直す必要があります。いつかそれらの作業ができる環境や時間が整うと良いですね。 これらの映画のスタッフや、前述の膨大なライブ映像の撮影を手がけているのは、現在360度パノラマ写真などで活躍している写真家の相川博昭くんです。今回の再発の特典付録「アイカワMEGA MIX」のモデルになっている人物ですね。相川くんは音楽家ではないですが、ご両親にとても大事に育てられた印象を受ける品の良さが漂う好人物で、我々周辺の映像周りを担ってくれていました。さて次回は、このアルバムの内容について、また、収録アーティストの総称である「京浜兄弟社」について、解説していきたいと思います。(続)



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