ワークショップに行った日

日曜日、カハタレのワークショップ、梢はすかさんがファシリテーターの「一億人に戯曲を読んでもらう99の方法」に参加した。場所は板橋区某所。
カハタレの稲垣さん、梢はすかさんとはうちの店の読書会で出会ったのが最初で、僕は戯曲を読むのも好きなのだが、劇作家の知り合いがいないので、戯曲に関するワークショップをお二人が開催するということだったのでこれは行ってみたいと申し込んだ。
自己紹介のあと、まず最初に梢さんの短編戯曲「闖入者たち」のテキストが配られ、参加者の俳優の方が読むのを聞き、その後、どのような梢さんの思考回路で作品ができていったかの説明を受ける。とにかくやりたかった場面があること、ある書籍からの発想(元からはかなり変化している)であることなどがていねいに語られる。短いテキストということもあるとおもうが、僕はかなりこの梢さんの思考の流れが追えたように感じている。墓のまえで二人の登場人物が会話するのがまず面白いという言葉があったが、それはたしかにそうで絵面も浮かぶのだけど、テキストの初見よりも梢さんの話を聞いたあとのほうがよりクリアになった。まあこのあたり戯曲のテキストのト書きに書かれていること、書かれていないことまで考えていくと複雑になるが、極めて重用なのは梢さんが自作の創作法を説明する能力に長けた劇作家であるということだ。
僕は劇作家の知り合いはいないが、小説家の知り合いはけっこういる。そして小説家には自作の創作について事細かく語れるタイプと語れないタイプがいることを知っている。両者の作品の質の話をしているのではない。そうではなく、創作する者には作るのと同様に批評もでき、それを文章に書き、言葉にして話すことができる人がいる。僕はワークショップにそれほど参加した経験があるわけではないが、それでも実作者がワークショップを開くなら思考の流れを他人に伝えるのにこの能力は必要不可欠じゃないかとおもう。でないと、話がいくらうまくてもテキストのまわりを空転する。なぜなら文学はそれぞれの読者にそれぞれの読みを誘発させるから。読書会ならそれでいいとおもうが、ひとりの作者の実践の形を紹介し、ひとつの道筋をみせるワークショップならばその能力はいると考える。
書き方のあとは、「一億人に戯曲を読んでもらう99の方法」が一つずつ紹介された。こちらは本当に参加者からつぎつぎと笑いがおこる楽しいものだった。とても役に立つものもあるが、多くは脱力系の戯曲を読んでもらう方法の数々。しかし、そういう力の抜けた冗談のようなものからほんの小さな真実が垣間見える瞬間がたしかにあった。数打てば当たるではないが、読んでもらうことを諦めない姿勢は、思考すること、継続すること、すなわち戯曲に限らず創作することに確実に接近していることを実感したし、これはテキスト=本を読んでもらうこととほぼ同義なのではないかとすらおもった。
実際にワークショップにいたときに、なにか梢さんの話し方に既視感をおぼえつつ、それが誰のいつの言葉かわからないでいたのだが、のちほど、それが双子のライオン堂の竹田さんが本を読んでもらうにはどうしたらいいかと(ときに突拍子もない)アイデアを出すのと似ているのだと思い出せた。竹田さんが過去に回転寿司のように本をまわしたことがあると口にしていたあれじゃないかと。

カハタレの、梢はすかさんの今後の活躍がますます楽しみになる日だった。


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