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第116号 文字

2023年2月22日

海外の方と接してると、殊更、日本人は言語の習得にかける時間が長いと思わざるを得ません。日本語の文字種だけでも、平仮名(ひらがな)、片仮名(カタカナ)、漢字、など数種類に及び、更に今は英語教育も充実してますので、アルファベッドも必須となっています。
一方、英語圏ではアルファベットのみです。(ですよね?)

文字種一つ一つの数にしてみても、アルファベットは26文字なのに対し、ひらがなだけで50文字(日常使われているのは46文字)あります。ひらがなもカタカナもアルファベットも、文字としては表音文字なので、習得という面では数は少ないに越したことはありません。
その数の差が、その後の学習にも影響している!?と思わざるを得ません。

仮名の歴史としては平仮名より片仮名の方が古いのですが、小学校で習う順は何故か、まず平仮名からであるのは大変興味深いです。(ちなみに戦前(太平洋戦争前)まではカタカナを先に習っていたそうです。戦後に文化風習が大きく変化し、軍国主義から平和主義へと日本は大きく変化しました。そのあたりも文字習得の変化に関わっているようです。)

そして、平仮名、片仮名を習得したら、次は漢字を習得するために時間を費やします。

漢字は表意文字なのでその文字ひとつから意味や内容を感じることも出来るでしょう。

文字は情報伝達の手段にすぎないのに、その習得に日本人は実に小学校や中学校の義務教育期間のみならずその前後も含めると10年以上も費やしていることになります。

高等教育の中で、数学がどうしてもダメな子が先生に「数学を勉強して何の役に立つんですか?」と質問したところ、「直接実生活には役立たないかもしれないが、勉強とはアタマを使う訓練だ。柔軟な思考ができるようになるってことは、将来必ずあなたの実生活に役立つ!」と言い切ったのです。なるほど!と思いましたね。

文字の習得も、それ自体が特別に意味を持つわけではありません。それをどのように使うか、がとても大切です。平仮名や片仮名は感情表現にも使います。愛や恋を語る上で文字はとても重要な役割を果たします。

I love you
これを「私はあなたを愛しています」と和訳して異を唱える人はいないでしょう。

しかし文豪はそんな陳腐な和訳は致しません。更に豊かな感情をその文字の中に込めます。

「月が綺麗ですね」と夏目漱石が約したのは有名な話ですが、二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と約しました。愛の深さを推し量るに余りありますね。


三十一文字と書いて『みそひともじ』と読みます。みそひともじとは短歌のことです。

日本人は、感情をダラダラと述べることはしません。五,七,五,七,七,の中に集約します。

欧米にも感情を文字で表すポエムが存在しますが、文字数は特に制限がありません。

平仮名、片仮名、漢字を使いこなし豊かな感情を持ち合わせる日本人が敢えて三十一文字に想いを込める、時に季節の移ろいを、時に相手を思う気持ちを、時に自身の内に秘めたる想いを、余分な文字を配した三十一文字に込める。研ぎ澄まされ洗練された三十一文字だからこそ、広く深い世界観を垣間見ることが出来るのです。
いやぁ、文字って本当にいいもんですね!(映画評論家・水野晴郎風に)

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