フェイク都市伝説「かさわらべ」
五年ほど前、とあるネット掲示板に、こんな話が書き込まれた。
私は岩手県の某市に住んでおります。その日も朝から雨が降っていました。肌寒いような、気が滅入るような梅雨の時期らしい天気でした。
夕方の五時を回った頃、タバコを買うために外へ出ました。近所のコンビニまで傘を差し、その途中でのことです。
道の脇に赤い傘が転がっていました。小さなサイズの子供用のものらしきそれが、開いた状態で道端にポツンとあったのです。
何でこんなところにと思いました。
その、薄汚れた赤い傘の横を通り過ぎる時、風で煽られたせいなのでしょう、急に傘が転がって私の前に。そして声がしたのです。
「あそぼ」
小さな、幼い子供の声でした。男の子なのか女の子なのわからない。地面に転がっている傘の影から、確かに聞こえました。
「ねえ、あそぼ」
傘に隠れた子供が私をからかっているのか?それにしては変でした。いくら小さな子供でも少しも姿が見えないのはおかしい。
「あそぼうよ」
遊ぼうと呼びかけながら、笑っている。その声は一人じゃない気がした。私は気味が悪くなりました。
傘を避けて歩き出そうとしたら、まるで私を妨害するように、つつっと傘が動いた。
「あそぼうよ」
踵を返した私はその場から逃げ出したのです。タバコは諦めました。
しばらくして振り返ると、あの赤い傘が元の場所に居るのが見えました。
あれが追ってこなかったことにホッとしたのを覚えています。
これがあの『かさわらべ』の最初の目撃談とされている。傘童と書くこともある。かさわらべ、もしくは、かさわらし、どちらでもよい。
東北地方での報告が多いのは多く目撃されるのは「座敷わらし」と関連があるのかもしれない。毎年、梅雨の時期になると目撃談が増えるのは季節柄であろう。
既出ではあるが「傘童」の特徴を述べておこう。
・道端に開いた傘が落ちている
・薄汚れた小さな赤い傘である
・雨の日の夕方に現れる
・近寄るとコロコロ転がってみせる
・傘の影から子供の声で「あそぼ」と呼ぶ
・姿は見えない
・立ち去ろうとすると付いてくる(こともある)
・雨が止んだらいなくなる
話しかけられても返事をしてはいけない。返事をするとどこまでもついてくる。そしてついて行った家に子供がいたら、自分たちの仲間にするため連れ去ってしまう、と云われている。
いかがだろうか。この『かさわらべ』に関して、もしも新たな目撃談などがありましたら、是非、ご提供いただきたい。
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