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誰かのためじゃないランジェリー

どうしても好きだと思えないものの一つに「勝負下着」という言葉がある。その言葉を耳にすると私は、条件反射で苦くて酸っぱいジュースを口に含んだ時のような表情をしてしまう。

一般的に「勝負下着」とされる下着に使われているような安価なサテンや目がチカチカするような赤やピンク色、テカテカとした黒いレースといった自体が、ちっとも美しいと思えないし、そもそも下着で勝負をしてどうするつもりなのだろうか。そんな野暮な刹那は少しも美しくないではないか。

私が好きなのは、天女の羽衣やシルフィードの羽根はこんな感じなのかしらと考えさせられるラ・ペルラのレースやチュール、少女と淑女の感性を軽やかに行き来するオーバドゥ、これぞ究極と唸らずにはいられないハンロの綿ショーツ。

毎朝引き出しの中を開けて、ブランドや色味ごとに並べた下着を眺めては、恍惚としながらその日の気分に合致するものを選んで身につける。けれど、それらは決して勝負の道具として繰り出されることはない。あくまでも私の一番外側の皮膚のような存在で、あくまでも私にとって一番身近な芸術。だから、どれも平等に気に入っているし、どれが勝負下着という訳でもない。それ以前に勝負なぞという雑な形で纏いたくない。

願わくば、日本の女性たちがもっと、誰かのためじゃないランジェリーを愛するようになりますように。

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