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「愛してる」みたいな、気が利かない言葉を

自分の誕生日にはあまり思い入れはないし、お祝いをして貰うと逆に恐縮してしまうような性格なのだけれど、やはり大切な人におめでとうと言ってもらえたり、自分が歳を重ねることや、今ここに存在していることを肯定してもらえるのは嬉しい。そう改めて考えたのは、昨夜素敵な女友達が「遅くなったけれど」とお誕生日をお祝いしてくれたから(そしてそれはたとえ364日遅れたとしても嬉しいものは嬉しい)。

そういえばいつかの誕生日の直後から、食事をするたび「お誕生日おめでとう」と言われることがあった。
「何回かに分けてのお祝い」と付け足されたりしながら乾杯をするのだけれど、私はその人のことが好きだったから「このままずっと一年中お祝いし続けてほしい」とねだったりもした。特別なプレゼントがある訳じゃなくても、気取ったディナーじゃなくても、そうやって乾杯することに凄くときめいたというのが正直なところ。

特別な関係じゃなくても、気取った関係じゃなくても、まるで一番の友人のような仲でいられたら、それは私にとって何よりも幸せなことだと思う。
そうして私は時々そっと思い出す。
彼が慎重に言葉を選びながらも、とてつもなく野暮で尊い一言を口にした、きっと二度と無いあの閑かな夜を。

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