ベージュの道はいばらの道
ベージュという色と言葉から私が連想するのは、まるで白鳥の湖のオデットのような女性の姿。
無垢で貞淑。そのくせ、ふとした瞬間、裸に近い色香が漂う。品性と知性を兼ね備え、社交的でありながらも控えめ。時に臆病で保守的。だけど、いざという時には頼りになる。
そういった印象をいとも容易く抱かせる稀な色、ベージュ。この色を自分のものにできれば、男性にとっての理想的な女性像を自在に操るファム・ファタールのような存在となり得るだろう。しかし、世の中上手い話がなかなか無いように、ベージュを制覇するのはそう簡単なことではない。
あくまでもベージュは、美しく纏うことでココ・シャネルも愛したベージュとして君臨するのであって、単に袖を通すだけ、羽織るだけでは、只の「オバさんっぽい地味な色」として認識されてしまいがちで、ベーシックカラーの中でも諸刃の刃のようなところがある。
この難解な色をクリアするには一体どうすれば良いのだろう。私はひたすら考え抜いた末、僅かに解決の糸口を見付けた。
ベージュを身近にするべく必要なことは「自分に合うベージュ」を見付けること。ヨレヨレのストッキング、透けないことだけを目的にしたブラジャー、毛玉だらけのカーディガン。そういった憎き呪いから全力で逃げながら、素敵だと感じたベージュをひたすら試す。質の良いカシミアニット。プレーンなジャージー素材のワンピース。マットでありながら艶やかなネイルラッカー。
一つ、運命のベージュに出会う近道を挙げるとしたら、自分の肌の色と似ていて、それよりもほんの少しだけ暗いトーンのものが、肌を白く、色っぽく見せてくれるような気がします。勿論、自分に合うベージュと出会えたからと言って、そればかりに頼ってしまえば簡単に「オバさんベージュ」へと転落してしまうからこそ、依存しないよう御注意を。恋愛もファッションも適度な距離感と緊張が必要なようです。
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