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「お決まり」を愉しむ

暑い季節、私は飽きもせず毎日毎日サマードレスを着続ける。日焼けも気にせずデコルテを放り出し、上半身はコンパクトに、スカート部分はふんわりと。その日のサマードレスに一番合うストローハットをかぶれば、コーディネートは完成。

夏が終わる頃に登場するのは、タートルネック。半袖の綿タートルから始まり、細身のリブタートルや、コーディネートの主役としても耐え得るボリュームがあるものまで気温に合わせてタイプは様々。そうは言っても、色は黒、紺、灰色と決まっている。

そんな風に過ぎてゆく私の日々は、「お決まり」だらけ。流行を知っておくべき職業ではあると雖も、それとこれとは別なのである。

食事、音楽、ヘアスタイル。流行を次から次へと上手に取り入れる生活は素晴らしいと思う。だけれど、私はそんなに器用な方では無いし、咀嚼して身につけたつもりでも、蓋を開けてみると今ひとつ自分のものになっていなくて、振り返った時に苦笑してしまったという経験も少なくない。そしてある時、気付いたのだ。闇雲に流行を追いかけるより、自分の中の定番を作り上げて自分の世界を膨らませてゆく方が性に合っていると。

時々、センスに関して問われることがあるけれど、私は私がずば抜けた感性を持っている訳では無いことを知っている。だからこそ、私は私の嗜好を念入りに構築してゆく。白い襟、薄手のソックス、短めの丈のトップス、足首が締まって見えるヒールの高さ、グレイがかった色味、ボーダー、ドット、ストライプ。

徹底的に「お決まり」を追求し、愉しむ。その分ピンと来ないものは視界に入れないようにする。

それをつまらない、味気ないと思う人もいるかもしれない。

だけどこうして築き上げてきた私の偏った頑丈な引き出しは、きっと私の強みになっている筈。だから私は私のお決まりを愛している。


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