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わたしのためのストローハット

帽子はかぶり慣れるまでが問題だ。どんなにコーディネートとぴったり合わせても、その日の装いを帽子主体で考えたって、家を出る直前に気恥ずかしくなって頭から外してしまえば、それでおしまい。

帽子というアイテムは、アイウエアとよく似ていると思う。顔の一部を隠すことで見えている箇所を一層魅力的に見せてくれるという点や、スタイルを少しばかりドラマティックに仕立て上げてくれるという点に於いて。

しかしながらそれらはきっと、気恥ずかしさという弱点とも表裏一体で、気取っている、とか、ナルシズムを感じさせてしまいがちであろうところもまた、サングラスやストローハットの共通点なのかもしれない。

告白してしまうと、私自身その弱点に捉われていたし、ストローハットをファッションとして愉しめるようになったのは、今年の夏の話。大好きなアイテムの筈なのに、今までに数え切れないほどのストローハットをかぶっては脱ぎ、かぶっては脱ぎして、それでもなかなかそれらをモノにすることはできなかった。頭の形にぴったり合い、つばの広さやリボンの色に至るまでパーフェクトだと購入したトゥルーフォーのパナマ帽でさえも、幾つもの夏、出番を逃してきた。

だけど、今年の夏は違う。気に入ったストローハットを幾つも購入し、気分と服装に合わせて使い分けては、かぶってかぶってかぶりまくっている。どうやら私は降り注ぐ陽射しを遮断できるばかりでなく、自分の仕草や表情を少しばかりロマンティックなものにしてくれる味方を手に入れたのだ。

自分の経験から言うと、ストローハットへの抵抗を克服する一番のおすすめは、兎に角一日中かぶり続けてみること。

食事の際などを除いて、いくら自分でピンと来ないと思っても、かぶり続けてみれば、その日を終える頃にはきっとストローハットとの距離が縮んでいるはず。それに、脱ぎたい気持ちをぐっとこらえ、かぶり方を思考錯誤することで自分の顔を明るく魅力的に見せてくれる角度やかぶり方のヒントを見つけられるだろう。

そうして、ストローハットをかぶることに慣れたなら、もうこちらのもの。自分の手持ちの服に合わせて、また新しいストローハットを買い増したくなることだって、きっとある。まるで自分のために作られたと思えるような、夏を舞台にした短編映画が一つ作れそうな素敵なストローハットを。

あなたが夏をもっと愉しむために、そして愛用アイテムを一つ増やすためにも、ぜひ試しに一度、ストローハットと共に一日を過ごしてみてほしいと思います。


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