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気粧の年頃

十代二十代の頃と比べて、私のお化粧はうんと薄くなった。

ファンデーションは使わなくなったし、マスカラを幾重にも塗ることも、アイシャドウで凝ったグラデーションを作ることもしなくなった。

あの頃大人は言った。「若いうちはお化粧なんてしなくて良いのに」と。今となっては全くその通りだと思う、肌の肌理もはりも今とは比べものにならない程に状態が良く、瑞々しく、潤っていた。皺一つなく、そのままの姿で十分に輝いていただろう。

それでもあの頃お化粧をすることが愉しくて堪らなかったことは事実だし、それらの行為は少なからず女としての感性を目覚めさせてくれた。だからこそ私は若い女の子の濃いお化粧を窘めようとは思わない。きっとそういうことって後になって自分で気付くほかないのだから。

若い頃の話はさておき、最近はお化粧を薄くしたいという方にどんどん気持ちや興味が向いている。もちろん日々歳を経っているのだから、隠したい箇所も増えてきている。それでも私が最近意識しているのは、足りない処を補い、微かな気配を漂わせる、化粧ならぬ気粧。まばたきをした時に響く生命の音だとか、笑った時に自分の周囲がやわらぐ空気感だとか、そういうものを引き立てるための、お化粧。

20歳の顔は自然から授かったもの。
30歳の顔は自分の生き様。

確かココ・シャネルがそんなようなことを言っていたけれど、せっかくならば自分の生き様を過剰に見せるよりは、今の私の姿を整えたい。そう思うからこその「お気粧」なのです。

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