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赤を味方につける

正直、長い間、赤は敬遠する色の一つだった。

赤を身に纏い、鏡を覗き込めば、自分自身の古風な顔立ちと相俟って、抜け感の欠片も無い姿が映るばかり。それに、赤はとても目立つ。どんな色よりも目を引く、というよりも、目を引きすぎる。「今日ならば」と、赤い服を着てみても、やっぱりこれで家を出るのは少しばかりやり過ぎではないかという不安が頭を過り、家を出る直前にいつもの服に着替えるということも珍しくない。そんな理由から、服を買う際の色バリエーションに赤があっても、赤はいつも真っ先に選択肢から外していた。

だけど最近になって、赤という色と距離を置くのは勿体ないことなのではないかと思うようになった。舞妓さんの白い肌とのコントラストが艶やかな赤い傘と小さな唇に塗られた紅。LOLITAのアイコンとなった真っ赤なハートのサングラス。ルブタンのソールが濡れるような赤でなければ、あんな風に他の靴メゾンより頭一つ抜きん出ることはなかったかもしれないし、死ぬまで踊り続ける赤い靴も、狼に食べられてしまいそうになる赤頭巾も、赤という色が物語に於けるインパクトとセンセーショナルさをより一層強めている。

赤い色に対して少しばかり友好的になった理由の一つとして、赤を着てもちぐはぐさや時代錯誤な雰囲気をそれほど感じなくなったこともある。実はこれは自分の年齢が関係しているのでは?と、密かに思っている。以前誰かが言っていた。「若い頃は本人の輝きが充分にあるから、大きくて煌びやかな宝石は似合わないし身につける必要はない。然し、歳を経って溌剌とした輝きが衰えて来た時こそ、宝石が似合うようになるし、宝石に輝きを助けてもらうべきだ」と。赤には、そんな宝石と同じような効力がある気もする。

それから、最近知ったことがある。
男の人は赤いワンピースを着こなしている人を見ると「オッ」と思うらしいこと。
赤い下着にテンションが上がるという意見を聞き、目から鱗だったこと。

どうやら、ステレオタイプだと思っていたイイオンナ像は未だ健在どころか彼らにとって永遠なのかもしれない。

そういった理由でこの頃は、いいなと思った服の色バリエーションの中に赤があれば、大抵それを候補にする。

危うくて、アバンギャルドで、初々しさとエロティシズムが同時に香るこの色。大人の女性こそ味方につけて損は無いはず。敬遠していた人ほど、案外悪くない、という結果が待ち受けているかもしれません。

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