橄欖の実の味 #月刊撚り糸

足りないものばかり
足りないものを数える時間すら足りない

足りないものに縛られて
足りないものが増えるたびに
足りていたはずのものが減った気になる
それは苦痛だけれど
実は人生の荷を軽くしてくれる
その軽さに甘える自分を嫌になっていく

結局最初から自分が嫌いで
理由は何でもいい

本当は何かに縛られて
自由度が減るたびに
人生は単純になっていく
苦しみが和らぐ

大雑把な線分けの分類に
安らぎを見出す自分が弱虫に思える
自由は苦しくて
自由を捨てて逃げるのも苦しい

知らないことばかり
何を知らないのかすら知らない

知らないことを知りたくて
学ぶほどに知らないことは増える
子が子を生み勝手に繁盛していく
一体全体どこまで知れば知ったと言えるのか

知り切ることなんて出来なくて
知らないことすら知らないことは苦しくて
きっと知らないことすら知らない方が楽だ

自分に簡単な嘘をひとつ
たったひとつ
それだけで『普通』ってやつになれる

僕が何を言っているか分かるかい？
分からないかい？

ここで深く息を吐いて
『分からないよ』
と言ってくれる人を探している