聖霊降臨の祭日(A)年の説教

2023年5月28日 20:01

・使徒12章 1~11節
・第一コリント 12章 3b~ 7, 12~13節
・ヨハネ20章19~23節

◆説教の本文

　聖霊の賜物は、非常に豊かで多様なものなので、この祝日に願い求める賜物を特定することはためらわれます。もちろん、私個人には、願い求めたいことがあります。それは「真率に言葉を語る」という恵みです。しかし、それをこのような大祝日のミサの説教とすると、聖霊の賜物を限定したという印象を与えてしまうことになるでしょう。

しかし、説教をする以上は何かを言わなくてはなりません。ただ、「聖霊の恵みを願いましょう」とだけ言って、説教を終わりにすることはできません。そこで、私は「多様性の恵み」を願うと言いたいと思います。それならば、聖霊の働きを限定することになりません。

　多様性の喜びについて語るために、最近知ったイングリッシュ・ガーデンの話をしたいと思います。私は一日のほとんど室内で暮らしているので、晴れた日には車椅子で戸外に出て、少し陽に当たるようにしています。私の暮らしている修道院(パウロ館)の橫には細長いスペースがあって、色々な植物が植えられています。クリスマス・ローズ、ミュージック、いぬばら、梔子など。世話してくれている庭師はアイルランド人なので、これはイングリッシュ・ガーデン風らしいのです。もちろん、小さなペースですから、本格的なものではありません。それでも、イングリッシュ・ガーデンの趣き、楽しさは分かったような気がします。日本風の庭とはかなり違います。私はパウロ館に来るまで、庭を楽しむ習慣を持っていませんでしたが、イングリッシュ・ガーデンとは楽しいものだと思いました。

まず、植えてある花や草木の種類が多い。多いだけでなく、入り混じって、植えられている。つまり、区画ごとにパレットのように、同じ草花がまとめて植えられているというのではありません。そして、花は刻々、咲き変わっていく。その姿は乱雑ではないが、いわゆる端正でもありません。花々は咲き溢れるという感じです。車椅子に座ってその中に佇むと、樹木や草花に包まれるような気持ちがします。子供の頃、バーネット女史の『秘密の花園』という児童小説を読みましたが、子どもたちが出会う花園はこういうものかと思いました。

　日本の庭は、植えられている草木の種類が少ないような気がします。色彩の変化も少ない。新聞やテレビで名所として紹介されるのは、必ず、桜とか水仙とか、一面に同じ花が大量に植えられて風景です。俳句には「花野」という季語があります。秋の草原に色とりどりの花が咲き乱れる様子を表します。アルプスのお花畑は花野です。だから、そういう風景を美しいと見る感受性がないのではないが、日本ではあまり育たなかったようです。
日本の庭は綺麗に刈り込んであります。外に向かって枝を勢いよく伸ばす、花が咲き溢れ出るという趣きではありません。そして、その中に包みこまれるより、少し距離を取って眺めるもののような気がします。縁側に座って眺めて、楽しむのが似合う。盆栽は欧米でも人気がありますが、日本の庭は、大きな盆栽なのではないでしょうか。

　私はイングリッシュ・ガーデン風の庭が好きになりました。ここから教訓(moral)を導き出すなら、多様性の魅力が感覚的に分かったような気がします。聖霊は多様に働かれます。そして、イングリッシュ・ガーデンの持つ、外に向かう勢いは、私にとっては、聖書のシンボルです。

　日本の教会は外国出身の信者と一緒にやって行くことになるでしょう。教会だけではなく、日本全体がそうなるでしょう。困っている外国人のお世話をするのではない。一緒に生きて行くのです。そこでネックになりそうなのは、日本人の「きちんとやらなければならない」という、それ自体は決して悪くはない拘りかも知れません。

これについては、だいぶ前の天声人語に面白い話が載っていました。朝の公園で、ラジカセで音楽をかけて、体操をしている青年がいました。だんだん体操に人が集まってくるようになった時、ある高齢の男性がこういうことを言い出した。「一人にラジカセの準備をさせるのはよくない。当番を決めて、交代にやろう。」
この提案は受け入れられて、交代制が始まったのですが、それから間もなく集まる人が減って、やがて朝の体操は消滅したそうです。実に味わい深いエピソードで、福音書に載せたいぐらいです。グループが衰えたのは、自由な雰囲気が消えて皆が窮屈に感じるようになったからでしょう。制度にすると、「私も手伝いますよ」という個人の自発性の発揮の余地がなくなってしまいます。きっちり物事をやるのが必ず良いわけではないという教訓です。
聖霊の自由な働きを妨げることもあるからです。

　イングリッシュ・ガーデンに親しむことは、聖霊の働きをビジュアルに理解する助けになるかも知れない。

☆ コロナワクチンの副作用で体調が芳しくありません。後ほど改訂版を出します。