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年間第27主日(A)年の説教

マタイ 21章33~43節

◆説教の本文

「家を建てる者の捨てた石、これが隅の親石となった。」

〇 「隅の親石」とは何かというと、いわゆる土台石、土に埋められた土台石と日本人は考えます。「縁の下の力持ち」という言葉を連想する人もあるでしょう。1995年の阪神大震災の時、崩壊した建物を見て、日本建築はなるほど縁の下の土台石の上に乗っているのだなと感心したことがあります。

「隅の親石」も土台石のことだと考える聖書学者もいますが、ローマ建築のアーチ構造のコーナー・ストーン(corner stone) と考える説の方が有力なようです。cap stone とも言います。

ギリシア建築の特徴美は列柱構造です。ギリシアのアテネのパルテノン神殿 に見られるように、大きな柱が横に並び、その列柱が建築を持ち上げている。
それに対して、ローマ建築の特徴美は「アーチ構造」です。ローマ時代の水道橋に見られるように、アーチ構造が多く使用され、それで高い建築物を可能にしています。高いだけではなく、アーチ構造を多用した建築物は開放部分を多く取れるので美しいのです。中世のゴシック聖堂に至るまで、ヨーロッパ建築の特徴となっています。

( 図で説明することができないので、皆さんがアーチを知っているものとして話を進めます。)

〇 アーチ構造は釘や接着剤も使いますが、基本的には、石の重さ自体で立ち上がっているのです。石を両側から弓形に積み上げていきます。頂上の部分で、右と左からの力が拮抗します。頂上に置かれた石がコーナー・ストーン、つまり、隅の親石です。アーチの完成です。

隅の親石は小さな石ですが、右側からの力と、左側からの力を受け止めて、全体を支えます。コーナー・ストーンをイエス・キリストのシンボルとするのはふさわしいことです。

イエスは「私のこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分を家を建てた賢い人に似ている」(マタイ7章24節)と言っています。土台を深く掘って、しっかりとした家を建てることも必要です。
しかし一方、私たちの生活の中には様々な力が働いています。良く言えば理想の力、悪く言えば欲望の力です。その様々な力を受け止めるのは、私たちの中におられるイエス・キリストです。おかげで、私たちは高い美しい建物を建てることもできます。イエス・キリストが私たちから消えれば、私たちの生活はバランスを失って、崩れ落ちるのです。

私たちの捨てたコーナー・ストーンを取り上げるのは誰でしょう。

「これは主がなさったことで、私たちの目には不思議に見える。」

☆ 説教者の舞台裏

(1) 「隅の親石」の話に終始して、悪い小作人の話をしませんでした。ユダヤ人が不忠実であったので、「神の救いの業」の主舞台がユダヤ民族から異邦人に移ったということが語られていると思います。

しかし、私たちは21世紀の日本人です。私たちには「ユダヤ民族』と「異邦人』 という対照はあまり意味を持ちません。教会史的な話をすることはできますが、自分たちにとって切実な説教をすることは、私には難しいのです。

(2) アーチ構造とキリスト教信仰の関係の考察は、私が考えたものです。
注解書には載っていないと思います。