おねえさんのすてきな笑顔(童話)

 学校に向かう小学3年生のじゅんちゃんは、けさはいつもと違い元気がありません。うつむき加減です。いつも学校から帰るとゲームばっかりして、テストの点数がわるかったので、昨夜、おかあさんにこっぴどく叱られました。
 「困ったなぁ・・・このままだとゲーム機を取り上げられてしまう・・・」。そんなことを考えながら歩いていたとき、工事中の道路に差しかかりました。ヘルメットをかぶった警備員のおねえさんが、「おはようございます」と元気よく笑顔であいさつしてくれました。おねえさんのすてきな笑顔と明るい声でじゅんちゃんはハッとわれに返ります。「そうだ、こんなことでくよくよしていても仕方がない。きょうからは勉強もしっかりして、それからゲームをすることにしよう」。
 その日、学校から帰ったじゅんちゃんはまず宿題をすませ、予習もちょっぴりやり、それから大好きなゲームを始めました。じゅんちゃんの様子をそばで見ていたお母さんは、何も言いません。少しほほえんでいるようにも見えます。じゅんちゃんのことを信じています。
 次の日、じゅんちゃんはいつもより少し早く家を出て、学校に向かいます。きのうの警備員のおねえさんに、きょうは勇気を出して自分からあいさつしようと決めていました。
 「あれっ?」。いつも工事中だった道路はきれいに舗装され、もう誰も立っていません。きのうで道路工事は終わったようです。
おねえさんに会うことを楽しみにしていたじゅんちゃんはがっかりです。でもすぐに気を取り直して、心の中でおねえさんに話しかけます。
 「おねえさん、きのうはありがとう。おかげで元気になりました。またどこかで会えるといいね」。

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