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仕事を辞めた理由

2020年秋、20年続けていた仕事を辞めた。

娘が小学生になった年から、最初は数時間のパートタイマーで。
子供が成長すると共に時間を延長して、後半は所得制限も外してフルタイムで働いた。

物流の仕事は成果が目に見えるのでやりがいもあったし、扱っていた文房具や事務用品などの商品を覚えるのも楽しかった。
なんだかんだ、仕事は好きだったと思う。


辞めるに至ったのには、いろんな理由がある。

それなりに重労働なので(束ノートや紙粘土など20㎏以上ある荷物もある)慢性的に腰痛に悩まされる。

女性が何十人も居る職場なので、人間関係がとにかく面倒くさい。

上司が決断出来ない人で、何を聞いても「ちょっと待って」と言って待たされるけど、その間仕事が進まない。
段取りと優先順位がそもそもない。

自治体が頑張って最低時給を上げてくれるのは良いんだけど、会社としては人件費が大変になるので、昨日今日仕事を始めた人と、ベテランの人の時給がほぼ変わらない。
そして所得制限内で働く人の年収は変わらず、時間は短くなるので、結局フルタイムの人間に負担が来る。

細かいことはたくさんある(いや結構大きいかな?)

20年の間には、良かった時も、そうでも無かった時もあった。
たくさんの社員も上司も見送った。
良かった時を知る人が少なくなって来て、会社に失望する事が増えて来た。

主人が亡くなった年の年末調整、寡婦の欄に印をした。
住民税とか、寡婦控除があるので必要な事なのだけど、書く時にはそれなりの気持ちの揺れはあった。

提出して何日かたった後、仕事中にいきなり上司がやって来て、
「本社から電話あって、年末調整に『寡婦』に印ついてたけど、
 死別か離別かどっちやったっけ?」と言われた。

頭が真っ白になった。

主人が病気になった事、亡くなってしばらく休ませてもらう事、みんな直接連絡したはずです。
そして貴方は私と仲の良い時給社員の人を通して
「会社から弔電打つから葬儀場の住所教えて」ってお通夜の日に聞いてきましたよね?
「お気持ちだけで結構です」って断ったよね?
忌引き明けた後、仕事行った日、ご挨拶にも行ったよね?

いろんな言葉が頭の中をぐるぐる回ったけど、結局「死別です」とだけ答えた。
「そうか、そうだよな」と返事が返って来た。

家に帰って子供にその話をしたら、
「お母さん、それ怒って良いやつ」と言われた。


同じくらいの年齢の女性も多かったので、御主人の病気で入院だったり、手術だったりで休む人も当然いた。
それぞれ大変なのは頭では解っているのに、そういう話を聞くたび「うらやましい」と思ってしまう自分がいて、この気持ちの処理には苦労した。

普通の病院に入院できる。手術ができる。大変でも治る。
「いいな」「うらやましい」
自分の中にあふれてくる気持ちがうしろめたくて、嫌気がさした。


ずっと、「ここまでは今の仕事をフルタイムで続けよう」と決めてた時期があって、それにはあと2年弱あった。
20年続けたんだから、あと2年くらい余裕で続けられそうなものなのだけど、やはり5年にも10年にも思えたこの2〜3年の感覚がまだ続いていて、あと2年が途方もなく思えた。

収入や支出の面でも変化はあった。

主人にかかっていた入院費がいらなくなった。
ささやかだけど保険金が入り、遺族年金が貰える事になった。

何より、主人が元気だった頃に比べると、驚くほど出費が無い。
同居している子供達からの生活費を足して、何とか暮らしていけそうな目処がたった時、何かが自分の中でぷっつりと切れた。

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