見出し画像

加速度

腸炎の方は何とか10日程で治った。
でもリハビリパンツにしていてもトイレの失敗がたびたびあるようになってきて、結局このあと、リハビリパンツ→パンツ型オムツへと移行していく事になる。

このあたりから、いろいろ言動にズレが出始めた。
トイレに行っては自分で内鍵をかけて出られなくなったり、ペーパーをやたら引っ張り出してトイレを詰まらせたり(この辺は認知症あるあるらしい)

遂には温水便座を壊してしまった。
あちこち押しまくったり、引っ張ったりしたんだろうと思う。
この温水便座はもう結構な年季物で、あきらめはついたのだけど、もともとは十数年前に主人がネットで買って取り付けてくれた物だった。

そう言えば、テレビの配線も食洗機の取り付けも、トイレの修理もしてくれたのにね。
修理屋さんが、壊し屋さんになってしまった。

その他にも、自分が置き忘れた家の鍵を捜しまくってそこらじゅう引っ掻きまわしたり、家の鍵がどれだか分からなくなって、鍵という鍵が全部ポケットに入ってたりもした。
パジャマについた小さな毛玉が気になって、ずっと取っていたかと思うと、
「これ不良品やから嫌」と言って着なくなる。

不安感からなのだろう。ソワソワ、イライラする事が明らかに増えて来ていた。

ある日、ちょっとモジモジしているのでトイレに誘ったら、座ってくれたのは良いのだけど「こんな所でトイレした事ないから出来ひん」と言い出した。


認知症の哀しいところは、元気な頃と変わらない風貌と変わらない声で、言動だけが変わっていく事だと思う。
良く知っている家族が、だんだん違う人になっていく怖さ。
多分それは本人もきっと感じている。
どうすれば少しでも安心してもらえたのか、本当に答えなんかあるのかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?