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リペアーガールアイデンティティー

・キャッチコピー
 誰かのために直すって、とっても楽しい。

・あらすじ
 父親の影響で工作を趣味としている女子高校生の北沢あやねはひょんなことから友人のエレキギターの修理(リペア)をすることになる。見様見真似で必死で修理をしたギターで演奏されたライブをみて感動したあやねは、楽器のリペアと音楽を通じて友人たちと共に自分の世界を大きく広げていく。

・一話
 単身赴任で離れて暮らす父親の影響で工作を趣味とする北沢あやねは周囲からは少し変わった子だと思われていた。そんな彼女の数少ない友人の一人である代田かなでからある日、音が出なくなってしまった彼女のエレキギターを急ぎで修理をしてほしいと頼まれる。それはどう見ても年季の入ったギターで、かなで曰く彼女の祖父の形見であるギターなのだと言う。
 更に事情を詳しく聞くと、彼女がギターボーカルとして活動しているスリーピースバンドが翌日のライブに出演予定で、それまでに直さなければならないのだが、楽器店での修理は運悪く混み合っていて間に合いそうにもないのだと説明される。代わりのギターを借りることはできるが、今回のライブはイベントのオーディションも兼ねており、どうしても自分のギターで100%のパフォーマンスをしたいのだという。かなでの必死の懇願に押されるようにしてなし崩し的にギターを受け取るあやね。
 その日の晩、ネットの情報を参考にしながら調べるものの、あやねの得意とする工作は主に木工だったため、勝手が分からず途方に暮れる。息抜きに何気なくSNSにつぶやいたところ、「それ、めちゃくちゃレアなギターじゃないですか!?」と食いついてきたIKGMと名乗るアカウントからアドバイスが次々と送られてくる。アドバイスに従い父親のツールボックスの中から電子工作用のキットを探し出し、それを使って原因を探るあやね。初めての作業に苦戦しながらも原因がジャック部の断線であることを突き止め、どうにか朝までに修理を完了させる。
 徹夜作業でふらふらの体を引きずって、かなでの待つライブハウスを訪れるあやね。初めて訪れるライブハウスの雰囲気に気圧されながらかなでにギターを渡す。試し弾きするかなで。修理の際に確認で出した音と全く違う迫力の音に心を揺さぶられる。ライブは見事に成功し、かなでを含めたバンドメンバーから感謝され、あやねは誰かのために工作をすることの喜びに目覚めるのだった。

・二話以降

 ライブから数日後、いまだにライブの余韻に浸っているあやねのところへ、再びかなでがやってくる。かなでから前回のライブの結果、オーディションに見事に合格し、次のイベントへの出場権を得たことを感謝される。そしてあやねに本格的にギターのメンテナンスを頼みたいと言ってくる。前回の経験があるため、今度は以前と違い自信満々で引き受けるあやね。しかし修理と違いメンテナンスとなると知らなければならないことが無数ににあるとすぐに思い知るあやね。そもそも弦の交換の仕方すら知らないことに今更のように気がつく。
 困ったあやねは再びIKGMに助けを求める。前回のお礼を述べていなかったことを詫びつつ、実はメンテナンスを頼まれたのだが勝手がまたく分からないので出来れば直接会って相談したいとダイレクトメッセージを送る。IKGMは無事にギターが直ったことは素直に喜んでくれたが、直接会う事については渋る様子を見せる。必死に説得するあやね。
「でも考えてみてください。このレア?なギターを直接触っていじれるんですよ。ワクワクしませんか? ほらほら」
「うぐぐ……どこに行けばいい?」
メッセージのやりとりや過去の投稿から予想はしていたが、あやねとの待ち合わせ場所に現れたIKGMは同年代の少女だった。帽子を深くかぶり似合わないサングラスをつけた彼女はあやねに対してとても警戒した様子を見せつつ池上まりなと名乗る。彼女の警戒した様子を全く気にせずにのほほんと挨拶するあやね。あやねの様子に拍子抜けしたような態度を見せる池上。彼女は実は人気アイドル「生神真里亞(いきがみまりあ)」として活動している芸能人だった。しかしそういった方面に聡くないあやねはそのことに気がついていない。そんなあやねの態度に最初は戸惑っていたものの、徐々に安心した様子を見せるまりな。幼いころから芸能人として活動をしてきたのであまり友人がおらず、寂しい思いをしてきたまりなは今更同年代のあやねとどう接していいのかが距離感がよく分かっていないのだった。
ギターメンテナンスのための道具を持っていないというあやねのために二人でショップを回りながらグリスやワイプなど、メンテナンスに最低限必要な道具をテキパキと揃えていく。
「さて、必要な道具はある程度これで揃ったと思うけど、作業場所が問題ね」
「え、私の家じゃダメなんですか?」
「初手から大胆なのね」
「?」
あやねの家には父親が用意した立派な工作室があり、まりなはきちんと整備された工作室の様子に感心しながらも落ち着かない様子。まるで餌を待つ子犬のようだなと思いながらあやねはかなでから預かっているギターを取り出してくる。食い入るようにギターを見つめるまりな。涎を垂らしそうな勢いだった。
「こ、これが……うへへ」
「まりなちゃん、ちょっと怖いです」
「ま、まりなちゃん!?」
「あ、いきなり名前呼びはイヤでした?」
「いや全然。まりなちゃん……まりなちゃんね……うへへ。」
「やっぱりちょっと怖いです」
まりなは気を取り直してあやねに丁寧にギターのメンテナンスを教えていく。初めてのため時間もかかり、時間も遅くなってしまったためにそのままあやねの家に泊まることになったまりな。この頃にはすっかりリラックスしてあやねに懐いている。
 翌日、かなでにメンテナンスが完了したギターを手渡しに行く二人。待ち合わせ場所のCDショップで生神真里亞のCDを偶然目にして「あれ?」とようやく気がつくあやね。すっかりあやねに懐いているまりなはあやねの様子に気がついていない。「まあいっか」と黙っておくあやね。
 待ち合わせ場所に現れたかなでは二人の様子に戸惑いながら声をかける。
「あの……あやね?」
「あ、かなでちゃん!ほら見て、こんなに綺麗になったんだよ!」
丁寧な仕上がりでメンテナンスされたギターをみて驚きと共に感動するかなで。
「凄い、あのギターがここまでなるなんて……ありがとう、あやね。ところで、その子は?」
「えへへ、実はぜんぶまりなちゃんに教えてもらったんだよ」
あやねからまりなを紹介される。初対面のためどうにもぎこちない二人。せっかくなのでギターを抱えたかなでの写真を撮ろうとなる。まりながスマホを取り出したところで、彼女のスマホケースにピックが挟んであることにかなでが気がつく。それはロックバンド「ファインバイン」のギターボーカルが使っているピックだった。そのギターボーカルはほとんどピック投げをしないのでかなりレアなピックだった。それを持っていることで実はお互いに同じロックバンドのファンだったことが分かり、急激に距離が近くなるかなでとまりな。かなでがバンドでギターボーカルを始めるようになったきっかけもそのギターボーカルに憧れてのことだったのだ。早速次のライブは一緒に行こうと約束して、まりなは二人と別れて家へと帰っていく。まりなの姿が見えなくなったところでかなではあやねに話しかける。
「あのさ、あやね」
「うん?」
「あの、まりなって子、アイドルの生神真里亞だよね?」
「直接聞いていないけど、多分そうじゃないかな。私もいまさっきCDみて気がついたけど。でも別に普通の子だったよ?」
「……あやねってやっぱり凄いわ」
呆れたようにため息をつくかなで。

以降、あやね、かなで、まりなの三人は楽器のメンテナンスや音楽活動を通じて友情を深めていく。

・ファインバインのライブにかなで、まりな、それにあやねも何故か連れて行かれることになりすっかりあやねがライブにハマってしまう話
・三人でかなでが使うエフェクターを楽器店に探しにいく話
・実はまりながそれなりにギターが弾けることが分かり、かなでが自分のバンドにまりなをギターとして誘う話
・かなでのエフェクターをあやねが修理する話
・あやねがエフェクターの自作に挑戦する話
・アイドルとしてのまりなのライブをこっそり見にいく話
・かなでが将来の進路に悩む話
・まりながアイドルとバンドの両立に悩む話
・あやねがローディーという職業を知る話

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