【ショートストーリー】風を治すクスリ
白衣を身に纏った医師が診察室で患者に向き合っている。
「はい、今日はどうされましたか?」
「職場の先輩が嫌な奴で、すぐに先輩風を吹かせるんです」
「わかりました。おクスリ出しておきますね」
「おや、今日はどうされました。また職場の先輩の問題ですか?」
「いえ、先輩風はこの前のクスリですっかり治りました。先輩風さえ吹かせなければとっても素敵な人だったので、実はお付き合いすることになったんです」
「それは良かったですね」
「ただ、今度は彼氏風を吹かせるようになってしまって……」
「おやおや、ではまたおクスリ出しておきますね」
「今度はどうされたんですか」
「前のおクスリで彼氏風は治りました。落ち着いたとても良い雰囲気になりましたので、結婚することになったんです」
「それはおめでとうございます」
「なんですけど、今度は旦那風を吹かせるようになってしまいました……」
「なるほどなるほど、ではおクスリを出しておきますよ」
「今日はまたずいぶんと浮かない顔ですね。どうされましたか」
「旦那風は完治したんですが、それが逆に良くなかったのか、職場の女性と不倫をしたらしく……」
「そうですか、お気の毒に。でもすいません、夫婦のすきま風に効くクスリは残念ながらないんですよ」
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