小学生の頃、教科書に載っているある物語を、主人公と異なるキャラクターからの視点で書き直せ、という課題があった。
ゲームの電源を引っこ抜かれたことで不仲になった父と子が、共にカレーライスを作ることで関係を回復し、そしてより強い繋がりを得る、という、いかにも教科書らしい作品だったと思う。
私はこの作品を、できるだけ主人公の言葉と同じレトリックを用いながら、正反対の視点、すなわち父の視点で書き直すことにした。まあまあ読書が好きだった私は、小学5年生の身の丈に合わないような技法を多用して、8000字近くの大作を書き上げた。
結果は想像以上だった。担任から別クラスの担任へ、そして学年主任へ、教頭へ、校長へ、そしてなぜか教育委員会まで上っていった私の原稿は、クラス通信から学校だよりにまで掲載され、これは本当に訳がわからないが、町長から手紙が届いた。