汝、隣人を殴れ

 なんだかんだ27になる歳になった。
 なんだかんだ生きてなんだかんだ遊びなんだかんだ病んでなんだかんだ今も生きている。
 
 産まれは変な町だ。
 パチンコ屋と釣り用具店と安っぽい電気屋に本屋。
 どこにでもある変な町。
 変な町には変な人もつきもので、多分に漏れず俺も変な人になった。
 夜な夜な繁華街を走り立ちんぼの横を通り過ぎ変な空気を吸って吐いて家でマラを擦り付けて寝ていた。

 俺も変ではありながら人並みの欲望はあった。
 有名になりたいだの権力が欲しいだの自意識だけが強くなった。
 産まれた町には音楽がある。しかも毎年町中全体で盛り上がり、町中では人が踊りながら練り歩き、踊る人をアホ、踊らない人もアホだと罵った。
 なんならお祭りを避けている人は日がな一日中、女だけが出るアニメやなよなよした男に女が群がるアニメを見るナードくらい。

 踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿保なら踊らにゃ損損

 まさしくハードコアだ。これこそ古からのハードコアスタイル。
 音楽との出会いだ。

 俺はハードコアを始めた。
 音楽に合わせて殴り合い、それは友情となるハードコアは己の闘争本能を奮い起こすのにうってつけだ。
 
 汝、珍棒を擦らず隣人を殴れ

 神は言った。
 
 新しい神話と聖書はライブハウスで作られる。
 イエスも仏陀もディスチャージの前では無力だ。

 人の痛みがわかるのは自分の痛みがわかる人だけだ。
 
 

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