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【幻】東京・新中野「北京」のザーサイ肉そば

町の中華に美学を感じます。
一般的な食材で、ぎりぎりの価格で、シンプルなのに豊かな味を生み出す。
そんなハードボイルドな町の中華を愛しています。

いきなりですが、先ごろ(2022年7月)閉店された東京・新中野の「北京」の「ザーサイ肉そば」です。

「ザーサイ肉そば」なのにザーサイも肉も見えません。
「これはもやしそばではないか」
という疑問は、食べ始めてすぐに氷解します。

もやしの中にザーサイと肉が隠れているのです。
「北京」のザーサイはラー油をまぶしていない青臭いタイプ。
料理の付け合わせには塩抜きした食べやすいタイプが出るのですが、ザーサイ肉そばでは塩抜きしていないしょっぱいタイプが刻んで載せられています。
炒めた肉も一緒です。

こんなザーサイそばも肉そばも、他では食べたことがありません。
ザーサイの香りと、スープと肉の旨味をそれぞれ独立して味わいながら、なおかつ渾然一体となって五臓六腑に染み渡ります。

たった600円でこれだけの味と香りの世界を堪能できるとは。

「もうあと何年できるか分からないよ」とおっしゃっていたおやじさんの顔が忘れられません。

まずは感謝を。
ザーサイ肉そばの記憶を大切にします。

もう一度食べたかった。

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