友和、あなたがそこにいればいい、「ケイコ 目を澄ませて」
三浦友和の演技から目が離せませんでした。映画「ケイコ 目を澄ませて」。
同様の経験はテレビドラマ「世界の中心で愛を叫ぶ」でも味わったんですが、「ケイコ」も三浦友和の演技が見られるだけで大満足っていう映画かと。
聴覚障害で両耳が聞こえない女性ボクサーを演じた岸井ゆきのの演技もびっくりですよ。音が聞こえないのにここまで繊細な演技ができるのかと。
ところが三浦友和が画面に映るともうダメ。友和か友和以外か。友和に見入ってしまう。友和、あなたがそこにいればいい。
潰れかかったボクシングジムの経営者にしか見えない。レフェリーやセコンドの声も聞こえないケイコにボクシングをさせるのは危険この上ないと分かっているのに、抜群の目の良さと熱意に賭ける。その情熱がしんしんと輻射熱のように伝わってくるわけです。
「世界の中心で愛を叫ぶ」でも見せてくれた淡々とした、でも微妙な間の台詞回しは三浦友和ならではかと。個人的には中井貴一と並ぶ「ナチュラルではなくリアル」(中井さんの言葉ですが)な名優かも。
役者は間だね。
「世界の中心で愛を叫ぶ」で「もう十分だ」というだけで嗚咽させてくれた独自の間合いは、「ケイコ」でも全編で味わえます。あんなにドラマチックじゃありませんが。
よく指摘される16mmフィルムで撮影した独自の色合いの粗い画面が、橋のたもとで語らう2人の場面にもぴったりで。
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