見出し画像

劇場公演・配信公演についての話

2021年4月8日に行われた、本多劇場主催の「DISTANCE」チームによる配信公演の映像・制作ワークショップを視聴したメモ&感想です。
イベント情報:DISTANCE 映像・制作 ワークショップ講座【オンラインあり】
YouTube:DISTANCE WS SAPPORO

客席制限→配信公演の可能性

緊急事態宣言から半年ほど経過して、舞台上演が再開された当初、ディスタンスを取るために座席を開けて集客されていました。単純に満席でもキャパ50%以下。
そんなところから劇場配信の可能性を見出します。

劇場は人が集まって感動が生まれる場所、それと相反するコロナ禍。
劇場で観劇をというエゴを通せなくなってしまった時代。
新しい演劇様式を模索する必要がでてきて、劇場では安全対策(消毒や検温など)という新しい対応(予算組み)が発生。

集客が厳しくなって他に収益を求めたとき、公演の配信を模索します。

配信であれば、原則、集客数の制限はない。
ただ、通常のチケット販売と比べ動きが遅いので、上演ギリギリまで集客の見込みが読めないという不安がある。
(回数を重ねると数字は読めるようにはなるけれど不確定)

配信は絶対ではない

興行収支を考えた時、配信は選択肢の一つであるが絶対ではない。
作品の方向性や出演者で配信が合っていればやればいい。
劇場公演もしかり。観客が楽しんでもらえるかどうかが大事。

主催者側、スタッフ、キャストが活動を続けて行くための選択肢として考える必要がある。

配信公演をするために

1.プラットフォームを決める
各団体、規模によってプラットフォームを決める必要がある。
そこで重要なのは「自分で探す」
大体の情報はインターネットにあるので、きちんと自分で探すことが大事。
他人任せだと、失敗した時に責任転嫁をしてしまうので。

2.配信会社を決める
会社によって、メインキーしかなかったり、バックアップキーを発行してくれたりすることろもある。
料金の安さではなく、対応システムサービスを重点に考慮する。
(登壇者のかたはイープラスのStreaming+(ストリーミングプラス)を高評価)

3.撮影業者を決める
演劇に関する知識を持ち合わせているか否か。
例えば、劇場は勝手に電源を取れないとかいうルールを知っていないとトラブルの元となる。
人員は、まともな配信を行うなら
ディレクション(兼スイッチャー):1名
指示出し:1名
配信管理:1名
カメラマン:台数分(最低2)
が必要となるので、一人で全部やるというところは信用してはいけない。

配信時、急なトラブルに対応するためには、制作側で対応する人を配置しておく。
制作と撮影側双方の協力体制が整わないと配信は難しい。

4.予算
音響や照明と同じくらいに収まるのがバランスが良い。

5.音
配信においてよく揉めるのが「音」。
担当セクションは音響でもあり、配信においては配信セクションでもある。
配信用の音を管理する人が1名必要。

配信作業の流れ

1.事前の作業
プロジェクタを使う、ワイプを使う、テロップを流す等、作品の制作段階から参加して、必要機材の確認をする。

2.スピードテスト
会場のネット回線の強度を調べる。上り速度が重要(最低20Mbps)。
光回線や有線が有力だが、集合回線だと弱いので、上演期間のみ光回線を開通させたりして対応したりする。
LiveU Solo Plusという携帯キャリア回線使用する機械も使ったりも(配信のみ)。
また、PepLinkという双方向に対応しているルーターもある。

3.カメラ位置、ブース位置
座席を潰すので、見切れ席含め、先行チケット販売前に確定しておく。

4.音響との連携
配信用のマイクの仕込み、使用回線について1週間前をめどに決めておく。
また、パラ(単独)音響であるかどうかの確認も行う。

5.電源の確保、ケーブル回し
機材の電源、ケーブルの取り回しの確認。

配信の作品に必要なこと

1.カット割りの作成
稽古の通し動画を見ながら、カメラのカットを考える。
これがないとカメラマンの感性に頼ることになり、作品のクオリティにも関わり、意図が伝わらないこともあるので、カット割りを作成した後で、カメラマンの感性にお願いする(90分作品で2日間くらいかかる)。
カット割りに正解はないが、(今撮るのはそこではないだろうという)間違いはある。

2.ふた絵、アーカイブ、コメント有無
ふた絵(開始前や終了時等に表示する画像)の作成。
アーカイブの確認、コメント機能の有無の確認。
何分前に配信開始、音は何分前から流す(権利に関わる曲)等の確認。

3.カメラの確認
会場入り後、実際に設置後の見切れ状態の最終確認。
カメラ設定で色や明るさを合わせる(機種は揃っている方がいい)。

4.配信PCの設定
配信アプリやOSのバージョンに気をつける(最新が良いとは限らないが)。

5.スピードテスト、照明チェック
上演時間帯での回線速度チェック。
長時間回しての安定度チェック。
照明の色チェック。

6.音響リップ調整、ボリューム調整
映像より音声が早く配信されて音ズレを起こしやすいので、タイミングで音を遅らせる調整を行う。
音量やバランスの調整を行う。チェック時は必ず音がずれるBluetoothイヤホンは使わない。

7.リハーサル
本番前にリハーサルを行う。

そのほかの対策

他媒体に展開するなら配信時は同録も行う。
配信で意図しないトラブルが発生した時の対応策もあらかじめ考えておく。

アーカイブはあった方がいい?

今(2021年4月現在)はあるところが多い。
配信公演が増えて競合も増えたので、アーカイブを残して多くの人に観てもらえるようにしている。

また、初日収録も増えてきている。
今までも、大千秋楽での収録は行われていたが、コロナ禍では急に中止となることもあり、開幕初日公演を収録(場合によっては配信も)を行って、非常事態に備えている。

楽曲権利

配信では、作品の使用曲に著作権問題がないか確認する必要がある。
既成曲を使用する場合は、事前に許可を取っておく(時間がかかる)。

劇場公演について

1.濃厚接触を避ける
濃厚接触者の定義(4つ上げられている)のうち、「互いが1メートル以内の距離で感染予防対策なしで15分以上接触」が関連性が一番高いことから、マスク必須で創作活動を行う。
あるタイミングでマスクを装着しない状況もあるので、リスクが上がるが、定義に当てはまらないよう極力マスク装着を行い下げる努力をする。

2.安全対策システムを整える
自分が感染していると仮定する、どうすればカンパニーを守れるかを考える。
不織布マスク、検温、手指消毒、足裏(靴裏?)消毒、換気、PCR検査を行う。

興行を成立させるために

1.収入経路を増やす
配信(どれだけの観客に見てもらえるかの試算(費用対効果)が必要)
物販(オンライン販売、DVD化など、作品を収入につなげる)
 →劇場販売時は対策を取り、クレカやIC交通系カード支払いに対応するなど
グッズ付きチケット(グッズ料金上乗せで買ってもらえる。お渡し手間もほとんどかからない)
クラウドファンディング(目的をはっきり。win-win関係が作れるようにする)
外部活動(主催公演ではなく、外部活動で売上げを上げると割切る)
助成金、補助金(J-LOD live、Arts for the future!事業(文化庁)、スタートアップ事業(東京都) 他)

※助成金情報を探すのに良いまとめサイト:ネットTAM(ネットタム)
(TOYOTAが運営しているアートマネジメントに関する総合情報サイト)

質疑応答(質問のみ抜粋)

・配信公演の価格設定ついて
・配信公演の広報の仕方
・配信公演するとDVD販売が落ちないか
・配信公演は今後も続くのか 等

感想

劇場での観劇や配信公演を観ていて、座席を潰してPAブースを設けたり、収録や配信用にカメラを設置しているのは見てはいましたが、今回のテーマとしてあった配信において、規模の大小はあれども、思った以上に大変な作業だと知ることができました。
コロナ禍の影響で、舞台作品の配信がかなり増え、気軽にネットで鑑賞する機会も増え、今後もこの流れは一つの形として定着するだろうと予想されました。
それはそれで、観劇より手間もお金もかからないですが、やはり、劇場で生で観劇するものとは別のものという印象です。

24/7/365 いつでも承ります。本人とても喜びます。