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【博多豚骨ラーメンズ最終巻発売中です!!!】はかとん最終章のあとがき的な【※ネタバレ注意】

『博多豚骨ラーメンズ』ファイナルシーズン、4月5月と連続刊行でお届けいたしました。
さっそく読んでくださった方もいるようで、ありがとうございます!

そもそも自分の作品についていろいろ語るのが下手な上に、さらに今回はネタバレしてはいけない要素も多かったので、14巻のあとがきには当たり障りのないことしか書けなくて…。(あとがきから読む方もいらっしゃるので)

なので、最後にこのnoteでちょっと裏話などしていこうかと思います。
完全ネタバレですので未読の方は閲覧しないようご注意くださいませ。
かなり裏話です。




前々から担当さんには「あと〇巻で完結してほしい、っていう状況になったら事前に教えてくださいね」「急に『次で終わりです』とか言わないでくださいね」とお願いしておりました。事前の準備期間がほしいなと思いまして。

そして、「あと3巻くらいで終わらせられますか?」と言われたのが多分11巻を書いた後だったかな…?
12巻のプロットを作りながら、ぼんやり「ラストどうしようかな~」と考え始めました。

基本的にずっとノープランでやってきました。
7巻8巻の辺りでうっすら決めていたことは、「馬場の血縁者がマーダー・インクの社長」ということと、「最終決戦で馬場がピンチに陥り、明太子の台詞と共に林が助けに来る」という2点だけでした。
その他はいくらでもなんとでもなるような感じで話を進めておこう、というスタンスでした。
私はしっかり設定を決めるタイプではなく(キャラの本名とか誕生日も決めてませんでした)、必要になったときにどうにか辻褄が合うように考えていこうというずぼらタイプなので。

せっかくだし最終巻は前後編の2冊にしたいなーという思いがあったため、それ故に猿渡の話を丸々一冊使って書けなくなってしまいましたが…。
とりあえず12巻のラストで最終章に続くような引きを作っておいて、「あとは未来の私、頼んだぞ!」と丸投げしました。


13巻の趣旨は「豚骨ナインが今までやってきたことを敵からやり返される」というものです。

本シリーズの法則で言えば、犯罪者は何かしら必ず「罰」や「報い」を受けてきました。
なので、主人公側もそうでなければならない。馬場たちだけ何のお咎めもなしではいけない。
罪の重さでいえば、もう豚骨ナイン全員が命をもって償うべきで、キャラクター全員が死ぬことが(この法則においては)正しいことだと思います。

とはいえ、さすがにそんなことをするわけにはいきません。

私は「主要キャラが死ぬ」物語がちょっと苦手です。自分が読む分にはいいのですが、書くとなると「このキャラが好きな人には申し訳ないな…」という思いが頭を過ってしまいます。
自分の作品で元気になってほしい、私が書いたものを読んで「人生おもろい!」って気分になってほしい。基本的にはそう願っています。だから、私がキャラを殺すことで読者さんに悲しみを植え付けてしまうことは自分の主義に反しているのではないか…という葛藤が生まれてしまうんですよね。
ただ単にドラマを作るためだけにキャラを殺したくはないなと。

ですので、最終章の課題は「いかにキャラクターの死を最小限に抑えるか&その上でどれだけ大きなものを失わせるか」というものでした。
つまり、「極力殺さず、死よりも辛い目に遭わせる」「死と同等の代償を味わわせる」ということです。
死に近い感情や経験、犠牲をそれぞれのキャラクターに植え付けることを考えて書きました。
林は相棒を失います。
馬場は二度と野球ができない体になります。(どうにかすれば医療の力で可能かもしれませんが、彼はそうはしないと思います)
今までやってきたことへの罰や報いをきちんと与えつつ、死を回避させるようにしました。

しかしながら、この方向性にはひとつ問題がありました。
「最終章のラスボスともあろう者が、豚骨ナインを一人も殺すことができないような雑魚でいいのか」ということです。
敵にも箔を付けなければなりません。誰も殺したくはない、だけど誰も殺せないような無能であってほしくない。相反する感情に苛まれます。

そこで、決断しました。
「よし、ひとりだけ殺そう」と。

誰を殺すかは最初から決まっていました。
もし仮に、この物語を続けていくうちに、どこかで「キャラクターを殺さなければならない問題」に行き当たったら。そのときは、この人に犠牲になってもらおうと、前々からそう考えていました。
5巻のラストの台詞は、そんな「いつか来るかもしれない日」のために書いておいたものです。

そういう次第で、13巻と14巻はこのようなストーリーになりました。
私だってハッピーエンドな物語が好きなのですが、本作の結末はすべてがハッピーではいけないと思っております。
犯罪を肯定する話にならないように、というのがこの作品の主義でもあったので。キャラクターたちも「碌な死に方はできないだろう」という覚悟をもってこの世界を生きてきました。
だから、「みんなで仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし」というようなハッピーエンドではなく、ハッピーなバッドエンドあるいはバッドなハッピーエンドにしたいと思っていました。
これは読者の希望・要望を満たす終わり方ではないと思います。がっかりされた方もいらっしゃるかもしれません。
それでも、ここは本作の美学やキャラの信念を貫き通して、「まあそうだよね」「そうなっちゃうのは当然のことだよね」と思ってもらえるような、納得のいく範疇での終わり方を目指そうと思いました。

これまで何事も隠して一人で抱え込もうとしてきた馬場という男が、最後のシーンで初めて林にだけヒントを残したこの瞬間を以って、彼らはようやく真の相棒になることができたのだと、私は考えております。


毎年毎年、本当に行き当たりばったりでした。
「今後、話がどうなるかわからない。どうすればいいかもわからない」「とりあえず来年の私、何とかしてくれ…!」という気持ちで新刊を書き続け、気付けば10年間が経っていました。

ですので、作品が終わったことに対して、寂しさよりも「きちんと終わらせることができた!」という達成感と安堵と喜びが大きいです。
作者の納得のいく形で終止符が打てるというのは、本当に幸せなことだと思います。

これまでの1巻から12巻までをフルに活用した最終章が書けました。本当に頑張ったなと胸を張って言えます。
私にとってはこれ以上ないほど最適解のラストだと思っているのですが、読者さまにもそう思っていただけたのなら嬉しい限りでございます。
よければ感想などお聞かせくださいね。

そして、あとがきにも書きましたが、ぜひ今後の豚骨ナインたちの未来を皆様の心の中で思い描いていただけたら幸いです。
これから彼らがどんな風になっていくのか、どんな道を進んでいくのかというのは、読者さまの想像の数だけ正解があると思っております。

そんな感じの最終章でございました。
これで本作は完全にゲームセットとなりまして、今後関連作品を書く予定は特にございません。スピンオフももうやっちゃいましたしね。
蛇足になってしまうので、私の方で勝手にアフターストーリーを書くとか同人誌を作るとか、商業以外で関連作品を世に出すこともないです。
何らかのご依頼があったときはもちろん書かせていただくつもりですが、ただ今のところそういったお話は出ていないので、本当の本当にこれが最後だと思って最終章二冊をじっくり味わっていただけたら嬉しいです。

もし今後、私が書いた何らかの作品がどこかで注目されるような奇跡が起これば、このはかとんシリーズが復活する可能性も生まれるかと思いますので、私はこれからもただひたすら頑張っていろんなものを書いていこうと思います。



最後になりましたが、今まで本シリーズをたくさん応援していただき、本当にありがとうございました。
作品の完結によって離れていってしまう方も多いかと思いますが、またいつの日か、どこかで繋がれたら嬉しいです。



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