2年4カ月付き合った彼女と別れて-2日目-

8月30日金曜日。
前の晩から上倉君が僕のワンルームアパートのロフトに泊まっていた。
僕の会社は世間に比べて朝が遅く、ロフトの上の上倉君はどうやら僕の本来の起床時間よりも
早く目覚めて暇を持て余しているのがベッドの上から分かった。
(きみが何時に起きようが、僕はもう少し寝るからな……)
と寝返りを打って、横にいる彼女を抱きしめた。

そこで目が覚めた。上倉君はロフトの上にいる。
だが、彼女はいない。
前日と同じく、日常生活のあれこれを思い出すより前にその事実が直感的に襲い掛かってきた。
最悪の目覚めだった。

会社に着くとまず煙草が吸いたくなった。
僕は喫煙者だが、それは寝る前に1本入眠前の儀式のように吸っていただけであり、
決してヘビースモーカーではなかった。
だが彼女を失ってからは明確にその本数が増えた。
会社でも一息つくためにすぐさま喫煙所に向かうようになってしまった。

メールをチェックすると、僕が数カ月前に提出したデータにミスがあることが発覚していた。
午前中はその対応に追われた。

昼食時、同期の香川君(仮名)からランチに誘われたので会社近くのマクドに向かった。

「珍しいね、マクドなんて」

と言われたが、食欲がほとんどない僕は定食屋さんで何かをガッツリ食べる自信がなかったのだ。
セットを頼んだ香川君の前で僕はコーラをチビチビ啜りながら今回の交際が破局した経緯を吐露していた。
途中何度か泣きそうになったが、なんとか事の顛末を話し終えた僕を香川君は気遣ってくれた。
社交的でパーティ好きな彼は何かというと僕をパーティに誘いたがったが、
しばらくは僕がそんな気分にならないであろうことを察知してくれたようで、
今回はその話は出なかった。
昼食を少し早めに切り上げ、彼は散歩することを提案してくれたのでそれに従ってフラフラ会社の周りを歩く。

僕は会社の先輩、同僚、上司らと昼食を共にする機会が多く、
お店で頼んだメニューの写真を彼女にLINEで送るのが僕のルーティンになっていた。
それが失われてしまい、その時点で昼食は僕にとってとてもセンシティブな問題だったのだ。

会社に戻った後は大して仕事をする気にもなれず(何かしらはやったがとても受動的な仕事の仕方だった)、
その日はいつもより早めに退勤して池袋に向かった。
関西から東京に来ていた上倉君を昨日自宅に呼びつけたが、
本来はこの日に池袋で飲もうという約束だったのだ。

「もう今日あったわけだし、明日は無しにする?」

と上倉君から打診されたが、
家に帰って孤独感に襲われることの恐怖におびえてた僕はそれを拒否し是非明日も池袋で会おうと頼んだのだ。

その日の飲み会は閉店の23時半まで続けられ、僕は帰路についた。
飲み会から帰宅するときに彼女にいつも報告していたのが思い出される。
帰宅してからPS4ゲームのペルソナ5をプレイして寝た。
ゲームをしている時間は割とそれに熱中できるので少しだけ悲しみが和らいだ。

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