2年4カ月付き合った彼女と別れて-4日目-

9月1日日曜日。
彼女と別れて4日目である。
この日も目覚まし時計をかけずに午前中はダラダラとベッドの上で過ごした。

小さな進歩としては洗濯をすることができた。
しなければ明日から会社に着ていくための下着がないのでせざるを得ないのだが。
その流れでピアノに少しだけ向かい練習をすることもできた。
あまり集中できずチラチラとスマホを見て相変わらず失恋系のネットコンテンツを漁ってしまったが、
楽器の前に2時間ほど座っていることができた。
言いようのない喪失感はまだ消えていない。

夕方、上倉君が関西に帰るというので、寄って行かないかと打診をするとOKをくれたので地元の喫茶店で落ち合った。
昨日彼女の叔父である上杉さんとお話しして思ったことを共有したかったのだ。
僕ともう戻るつもりはないのか、という上杉さんの問いに対し彼女が「わからない」と答えたこと、
それを受けて僕の気持ちが激しく揺らいだこと。

「とりあえずEMMEは寂しいんだろうね」

そう前置きした後に彼なりのコメントを述べてくれた。
一般的に分かれてしまった後の復縁はお勧めできないが、
もしそちらに僕が揺らいでしまってもそれを責めることは誰にもできない。
そして、どうせならば失恋というそう何度も経験することがない状況に置かれた自分を実験台だと思って観察してみればどうかと提案してくれた。
実験だと思えば結果がどうなったとしても成功も失敗もない。
自分を実験台として突き放すことによって自分の感情からも距離を置くことができる。
とても良い提案だと思った。
これも僕がブログをはじめようと思ったきっかけだ。

自由人である彼はバイクでキャンプをしつつ関西まで帰るようで、
バイクで去っていく彼を見送った。
恋人と別れた喪失感を抱えながら誰かが去っていくのを見送るのはなかなか喪失感が増すものだ。

夕食も喫茶店で済ませてしまったが、まだ時間は18時を回ったところ。
このまま家に帰ってもすることはないので夜の長さを持て余す。
(曲を作るなり楽器を練習するなり以前は選択肢が無限にあったが、今は夜にそれをする気力がない)
どうせなら失恋しないとできないことを、と思いTSUTAYAでDVDを借りることにした。

失恋向けの映画はないかなと思い検索すると、
キャメロン・ディアス、ジュード・ロウが主演の『ホリデイ』という映画がその中で気になったのでそれに決める。

失恋した2人の女性が自宅交換サイトでお互いの家を交換し、
それぞれの場所で新たなステディを得るという寝言のような内容で、
少なくとも失恋して4日目で見るにはお花畑すぎた。
感情移入できたのは冒頭15分の失恋パートぐらいでそこからはテンションマックスのハピネスで溢れているそれは
寧ろ恋人と観た方が楽しいと断言できる。
やっぱりネットの検索の質は落ちている。

DVDを返却用の袋に叩き込んでペルソナ5でもするかと準備していると電話が鳴った。
僕に電話をよこす人間などほとんどいない。
もしかしたら彼女が!とスマホに飛びついたが、別の友人(ギャル)だった。

ギャルは近々事情があって和歌山まで引っ越すのだが、田舎は嫌だと。
要するに愚痴である。
こんなフラれたての僕に電話をかけてくるぐらいなので無下にはできず、
話を聞いているうちに今度は僕の話になった。
割とこのギャルとはお互いの恋愛状況を時々報告しあうような関係性だったので、彼女との顛末を事細かに聞いてもらった。
途中から僕は大泣きした。
上倉君や香川君、滝さんなど親しい友人や共通の知人である上杉さんの時とは比較にならないほど嗚咽を漏らした。

「一つだけお願いが叶うなら、何がいい?」

とギャルは僕に聞いた。

彼女と復縁する。
なんだかそれは違う気がする。

仕事での成功。
それは自分の力で何とかする。

お金は別にそんなに要らない。

じゃあ、彼女が幸せになること?
でもその幸せの中に僕がいないのは虚しいだけだ。

その後電話を切り、ボンヤリとその質問についての答えを考えると、
一つアイデアが浮かんだ。
それは
「困難に打ち勝つ精神力がほしい」
だった。

僕にもっと余裕があれば、彼女に酷い発言をせずに済んだ。
仮に破局を迎えたとしても、これほどふさぎ込むこともないかもしれない。

またビールを飲みながら夜遅くまでペルソナ5で遊んだ。
眠気が襲ってこない限りはベッドで横になりたくないのだ。
その間に心身を支配する虚無感と喪失感に耐えられないだろうから。
絶望はまだ続いている。

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