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MBA留学の社内選考を突破するための方法(前半)

社費留学制度とは

  私がいた日系企業では、海外大学院留学もしくは海外の他企業に研修生として参加するトレーニという2つの制度がありました。どちらも研修期間中の学費、VISA代、給与を会社から出してもらい、研修生は学びに集中できる制度。おいしい制度なので多くの社員がトライするものの、突破できるのは毎年0人~2人という超選抜型の研修でした。有名どころだと楽天の三木谷さんがこの制度を活用してHBS(ハーバードMBA)を卒業したようです。
 
 私が挑戦していたとき、MBA受験自体の情報は豊富だった一方で社内選考についてはGoogleで調べても有益な情報が収集できなかったことを記憶しています。ですので私の経験から得たノウハウをできるだけ他の会社でも使えるように汎用化させて書き留めたいと思います。

社費留学制度を突破するための論理武装

 社内選考を突破するためには現在の業務に於けるパフォーマンスが良いこと、また基礎的な英語力があることを前提に

 1: 会社のあるべき姿は何か?
 2: あるべき姿を達成する上での課題は何か? 
 3: 課題を解決するにあたってなぜMBAなのか? 
 4: MBAが会社の課題を解決するとしてなぜ君が行くべきなのか?
 

に全て答えられないといけません。論理武装があまいと面接官からの更問に窮して「海外MBAに行けば人脈が〜」「根性が〜」「挫折が私を強く〜」といった定性的かつ精神論的な研修効果に議論が着地し選考は終戦を迎えます。
 論理展開としては1と2がセット、それに対するアンサーとして3と4がセットになると考えています。ですので以下、「1と2の作り方」とそれにつながる「3と4の作り方」を記載していきます。

会社のあるべき姿とそれに向けた課題の設定

 まず先に2点ポイントを挙げます。

ポイント①:主語は"私"ではなく"会社"
ポイント②:虫の目→鳥の目
→魚(うお)の目で論理展開

ポイント①について:
 主語が「私」になっている方は真っ先に落ちてしまいます。昇格面談の際のストーリをそのまま応用してしまっているのが原因ではないでしょうか。昇格面談では「私はこんな実績を挙げた。だから私は昇格に値する人物だ」というストーリを語ります。でも社費留学選考で「私はこんな実績を挙げた。だからMBAに行かせろ」では駄目です。MBAは成果を挙げた方へのご褒美ではありません(そういう側面も少しはあるのかもしれませんが)。
 会社は「(数千万円投資する)MBAが会社の課題をどう解決し、結果として利益に貢献するか」を見ています。ですので「会社の課題を解決するためにはどうしてもMBAで獲得しなければいけないノウハウがある」と論理展開する必要があります。また、別の側面として、「私」にフォーカスしすぎるとMBA取得後の転職予備軍として見られる可能性もあります。昇格面談と社費留学選考のゲームの違いをまず念頭に入れてください。

ポイント②について:
 会社のあるべき姿は「解決しなければいけない最重要課題」と表裏一体です。ですので、まずは「課題」の抽出をする必要があると考えています。課題の抽出方法については以下の通り記載します。その課題を解決した先が「あるべき姿」になります。

 では、さっそく虫の目、鳥の目、魚(うお)の目について簡単に定義します。

虫の目:アリのように地面に近い視野を持っている。つまり現場目線。

鳥の目:鳥のように全体を俯瞰した視野を持っている。自社全体、グループ会社、競合他社なども視野に入れながら対局的な目線を持っている。

魚(うお)の目:魚の目のように物事の流れや動きを捉える能力を持っている。今後の市場の流れを読みとる"目"を持っている。

 会社の課題を語る上でまずは自分の業務(≒現場)から課題を抽出する必要があります。自分の業務とかけ離れたテーマ設定だと面接の更問を打ち返せず「地に足がついていない」という評価をもらってしまいます。踊る大捜査線という昔のドラマで名言がありましたが「事件は現場で起きている」とするべきです。これぞまさしく虫の目です。私は経営企画部にいたときに「現場の目線」をストーリに追加するのに苦戦しました。

 ただし、(若手社員に多いのですが)虫の目で議論が終始し落選というパターンをよく見ます。MBAは経営学修士です。現場のカイゼンであればトヨタさんとかにトレーニに行った方で良いでしょう。「この課題を解決するためには経営学修士が必要だ」というストーリを完成させるためにはそれが経営の課題であるべきです。皆さまが抱えている現場の課題が、隣の部署や部門・本部間・グループ会社間・業界でどういう意味を持っているのか、売上や利益を拡大する上どういった意味をなしているか、まさに社長の目でその課題を抽象化していく必要があります。
 若手の頃、最高意思決定会議である経営会議に(議事録係として)参加していました。経営幹部はとても複雑な事象を必要最低限のエッセンスだけ取り出して抽象化して物事を見ていました。まさに鳥の目、鳥瞰です。「事件は会議室"でも"起きている」のです。皆さまが抱えている課題を鳥瞰して「会社として最重要かつ迅速に対処しないといけない問題」と面接官に認識させてください。その際は、財務諸表等の定量的なデータによる裏付けも非常に重要になります。

 ここまで論理武装できていればかなりレベルが高いストーリになると思います。ただこの選考は狭き門。ライバルとの差をつけるためには更にひと工夫必要です。今の課題を抱えたままでいると中期的に大変だ、という悲観的な将来を魚(うお)の目から描けると更に良いでしょう。中期的(10年~15年)な話は根拠に乏しくなりますが、魚(うお)の目とは虫の目と鳥の目による論理的な積み上げの後、最後の最後で発揮する「論理の飛躍」みたいなモノと私は捉えています。
 異業種交流会にも参加した、自費で中小企業診断士も取得、グロービスにも行ってみた。自分でできることは海外MBA以外全て経験し、魚(うお)の目を養ってきた。その結果、(今の課題を放置していると)これからのこの業界/会社はこうなっていくはずだ。という最後の(悲観的な)中期展望を面接官と共有すると良いと思います。

 以上のように虫の目、鳥の目、魚(うお)の目で構成された会社の課題を解決した姿が会社のあるべき姿である。というストーリを臨場感を持って面接官と共有できれば、これから先の論理を展開する上でかなり優位に立つことができると思います。

 長くなってしまったので続きは後半に記載したいと思います。



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