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木原事件 警視総監の謀反

安田種雄さんの不審死に関する刑事告訴が早々と大塚署により受理されました。この結果、刑事告訴状提出を18日に報じたテレ東だけでなく民放各社が簡単ながらそのニュースを報じています。長い間マスコミから相手にされることがなかった遺族にとっては万感の思いがあったはずです。報道の内容は各社とも2006年に不審死した男性が木原前官房副長官の妻の元夫だったこと、当時は自殺で処理されたこと、遺族がそれを不服として刑事告訴し、それが受理されたと言うことでほぼ共通しています。ただ2018年に再捜査があったことについては報じた局と報じていない局に分かれました。でも再捜査の事実があるとないとでは露木警察庁長官の「事件性がない」と言う言葉の信憑性がだいぶ変わります。木原氏の再捜査介入問題を隠したいのか、それとも警察庁長官の事件性なし発言の間抜けさを隠したいのかは分かりませんが何かテレビ局の意図を感じてしまいます。微妙な忖度と言うことでしょうか。そう言えばテレ東が刑事告訴状の提出を1社だけ報じた時は事件性なしとする警察庁長官と事件性ありとする元担当警部補を対比する形でわかりやすく説明していたのに、今回は再捜査にも元警部補にも言及しなかったのは残念というか、警察からなんらかの圧力があったのではとさえ感じてしまいました。各社とも報道の前にいろいろと悩んだのでしょうね。

ユーチューブ界隈では刑事告訴の受理が余りに早かったことから、これは形だけの捜査をして皆の関心が薄れるまで時間稼ぎをする作戦ではないか、いや大塚署の女性署長が謀反を起こしたのではないかと面白く捉える向きもあります。でも犯人不詳とは言え殺人事件の刑事告訴ですから、所轄が単独で判断出来るはずもなく本庁の捜査一課に伺いが上がるはずだし、特に本件なら既に有名な事件になっているので間違いなく警視総監まで上がっていると考えるべきでしょう。現在の警視総監は小島裕史氏で入庁は1988年、東大法学部卒のエリートです。ただ昨年、警察庁長官官房長から警視総監となっており警察庁長官レースから外れ、所謂上がりのポジションです。事件性なし発言の露木警察庁長官は86年入庁(京大法学部卒)と2年先輩ではありますが、先輩だとか出世だとかをもう気にすることもないでしょう。文春報道でも露木警察庁長官は「火消しをしろ」と命令する際、小島警視総監ではなく警視庁刑事部長に直接指示しています。警察庁長官と警視総監の関係は我々には計り知れない微妙なものがあるのかなと感じてしまいます。今回の刑事告訴受理は小島警視総監が露木警察庁長官の失言を無視し警察の威信にかけて再捜査すると決めたと前向きに考えることも出来ますね。

ただ再捜査が開始されたとしても単に2018年の時点に戻るだけです。当時でさえ物的証拠に乏しく、当日事件現場にいたX子の証言が最後の拠り所だったことに変わりありません。その為に「落としのプロ」だった佐藤元警部補が呼ばれた訳で、そのプロさえ10回近い尋問でも落とせなかったX子が今回は正直に話をするとはとても思えません。何しろ事件発見当日の夜に浮気相手と居酒屋でVサインをして喜んでいたX子です。種雄さんの遺体を引き取らないだけでなく葬式にも来なければ線香をあげに来たことさえないのです。事件後、種雄さんの両親に一度も孫の顔を見せてもいないX子です。X子かその父親が犯人である可能性は限りなく高いのですが、新たな物的証拠が出てこない限り捜査を再開したとしても立件することは極めて難しいのではと思ってしまいます。これは警察の再捜査であろうと検察による新たな捜査であろうと多分同じだと思います。

週刊文春の記事では佐藤元警部補がX子の取調べ中止を告げられたあと、最後に二人だけにしてくれとして調書なしの会話をしています。「あんた、そんなこと出来ないよな」X子ゆっくり頷く「俺とお前、腹ん中で思い浮かべてるのは一緒だよな?」X子長い沈黙のあと頷くかのように目線を落とした。「俺の腹の中と同じだな。これはお互いの腹に収めてあんたもちゃんと生きていきなよ。今の旦那さんに尽くしていきなよ。」するとX子は神妙な表情に安堵を滲ませた。とあります。X子が落ちるのもあと少しだったようにも思えますが、一方、供述を取ることがどれだけ難しいのかを垣間見た気もしました。佐藤さんにカムバックして貰えると一番いいのですが、そんなことは夢のまた夢ですかね。

話は変わりますが、今回刑事告訴が受理されたことで一番頭を悩ませているのは国府田捜査一課長でしょう。何しろすぐ上からではなく斜め上から命令されて「事件性はない、自殺で矛盾しない、従い探すべき犯人はいない」と踏み込んだ話までしてしまったのです。国府田捜査一課長は刑事告訴状を目の前にして、まさに「どうする国府田!」です。露木警察庁長官も窮地に追い込まれてはいますが、法と正義に基づき公正かつ適正に捜査され自殺で矛盾はないと「警視庁」が言っていると直接の責任を回避しているのでその姿勢を最後まで貫くのでしょう。今回の警察受理についても警視庁が再捜査するならもちろん異論はないとでも言うのでしょうね。しかしながら個別案件に対し「事件性はない」と敢えて踏み込んだ発言を何故したのかと言う疑問は残ったままです。周りにいる東大法学部卒の警察官僚は阿呆なことを言ったものだと影で笑っているだけでしょうが、国会に呼ばれれば警察庁長官たるもの警視庁がそう言ったからでは済まされないと思います。遅かれ早かれ黒幕の栗生官房副長官から首を切られることになるでしょう。

さて刑事告訴受理の最終決断をしたと思われる小島警視総監はこの後どうするのでしょうか?もし本気で捜査を再開する気があるなら最初にすべきことは国府田課長を交替させることでしょう。俺の頭越しに警察庁長官と馬鹿なことをやりおってと思っているなら是非そうして下さい。国府田課長にしてもこのままでは針のむしろでしょう。何しろ現場を見た警察官なら100%殺人事件だと思うだろうと佐藤元警部補が指摘しているのに殺人捜査のプロであるはずの捜査一課長が「自殺で矛盾はない」と言ってしまったのですからね。いくら警察庁長官に指示されたこととは言え、捜査一課長として「犯人隠蔽に加担した」のですからその罪は重いです。国府田課長はたしか父親も警察官だったはずです。父親を誇りに思っているならもう一度初心に帰って嘘をつかない真っ当な警察官になって欲しいものです。

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