推しがふいにいなくなった話⑤

少しずつ世の中が動き始めてきた。無観客で有料配信ライブを行うグループが増え、お客さんを減らして実際にライブを行うグループや、具体的に感染対策をとりつつ特典会を模索するグループも出てきた。今年の夏のハローのコンサートは全員着席で、各メンバーソロのバラード曲カバーをひたすら聴き続ける方式を検討しているという。


推しのグループはといえば、グループ内ユニットの新曲作成に向けたクラウドファンディングが動き出し、瞬く間に目標金額に到達した。絶対にめちゃくちゃ可愛くていい曲ができあがることだろう。


この数か月、自粛にともない世のオタクと推しはきっぱりと分断された。毎週のようにイベントに足を運び、特典会に参加し、他愛もない会話をしていた日々が幻だったかのようだ。そうして離れた推しとオタクの距離が、また少しずつ縮まり始めた。道のりは遠かれど、着実にベクトルは互いを向いている。


そんな状況が羨ましくて、ふと心が爆発しそうになる。推しがふいにいなくなったオタクのベクトルはどこを向いていいかわからず、ぐるぐるぐるぐる回り続けている。



今日のオンラインやついフェスの発表。正午に最終追加アーティストとして発表されて、「え?無観客ライブやるの?できるの?めちゃくちゃ吉報じゃん!!!!!」と全身に血液がぎゅんぎゅん流れた9分後、「スペシャル動画を作りました!」の案内を受け取った。目の前の窓ガラスに向けてスマホをぶん投げそうになった。社員食堂(5F)だったから我慢した。何人ものオタクの心がボキボキに折れる音が聞こえた。

昼休みの残りの時間、何もやる気が起きずにしばらく放心状態だったけど、TVerで昨晩のあちこちオードリーを観てギリギリ気持ちを立て直した。今日もテレ東に救われて生きている。

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