見出し画像

連載:【「ラーメン二郎」は「ラーメン」ではないのか】第四夜『ラーメン二郎は脂っぽいのか』


だいぶご無沙汰をしておりました。

キリヲでございます。


長らく休んでおりました理由は2つ、ございます。

一つは、リアクションがそんなに得られなかったこと。
これは前回も書いた通り、自分自身でも気づいていたとおり、そんなに面白くないんじゃないか、あんまり読者の皆さまを煽れてないのではないか、と思ったのが理由です。


もう一つは、持病の悪化でした。

治っても良いような月日が経っていたにもかかわらず、この頃は一番気分的によくなかったというのを覚えています。自分の承認欲求を満たすような気持ちで書き始めてみたものの、まだまだ人生における辛さや、置かれている境遇を原因とした気持ちの落ち込みがひどく、なかなか筆を手に取れなかった次第であります。

ライフワークとなったInstagramの投稿とブログの更新だけは続けており、それに加えてnoteまで挑戦するというのは荷が重すぎた。少しばかり間を置いてみたが、たまに書いて見るくらいにしようと思う。

ネタについてもいくつかプロットを書いておいたのに、いつの間にかそれをどっかに投げてしまったわけです。


とはいえだ。

この数カ月間の間にも感じて、想って、そしてこれは話のたねになるなぁと思うことは多々発生してきた。

真っ先に手をつけなければならないこと、
それは、ラーメン二郎は脂っぽいのかということである。

ラーメンは健康に悪いのか

「ラーメンは脂っぽいから健康に悪い」という、現代日本を巣食う問題。
これに関しては私も何度も何度も被害に遭ってきた。

「そんなに食べていたら早死するぞ。」

まぁ、当然といえば当然か。おまけに塩分量もアレときたし、特に量も多いものをよく好んでいる私であるからこそ、その批判的意見とは一生付き合っていかねばならないし、死んだときに「ほらやっぱりな」と言われる覚悟がなければならない。

だがしかし

私のようなわりとガチで食べているタイプのラーメンギークは「3ないの掟」を掲げている、もしくは言わずとも気をつけている人が多い。

・スープは飲まない

・間食しない

・酒以外の飲料は茶とコーヒー、水(白湯)のみ

基本的にこの3つは多くの人が守っている傾向にあると思う。

たとえば人間は加齢するといやに甘いものが食べたくなったりする。これに関しては生物学的な根拠をよく存じ上げないが、「炭水化物からの糖生成が鈍るので、直接甘いものを食べたくなる」ことが理由なのではないかと勝手に推測している。

故に我々は純粋に炭水化物と、そのラーメンが持つ甘みといったものを直接摂取することによって、栄養を摂取していることになる。

どうも、ラーメンは健康に悪いものという前提からの罪悪感を抱いたまま、ラーメンを食べているきらいがあるのだろう。

ラーメン二郎は脂っぽいのか

答えは「ケース・バイ・ケース」である。

あっさりと言ってしまった。なんてあっさりと、こんなわかりにくいところで結論を発表してしまった。文章には起承転結があって、その流れでしっかりと離しをしていかねばならないと思うのにも関わらず、ここで承をぶちこむことになったのには当然、この結論を証明していく必要があるからである

この結論についてはいくつか持論を展開していかねばならない。

ラーメンの油脂量

これについて考えるには、経験が必要となってくる。
たとえばインスタントラーメン。インスタントラーメンの多くはフライ麺であり、油で揚げて麺を固めている。それを湯がいて水分を吸い上げさせて3分待つ。そうして出来上がったスープにはなかなか球状の油脂分が浮いているようには見えず、どうも油分を摂取しているようには感じられない。
なかにはスープに入れる調味料として油脂の袋がついていることもあるが、それもそこまで大した量じゃないと言える。
ノンフライ麺と言われているものに関しても同様、全く揚げていない乾燥製法を取り入れているはず(あくまで「はず」)なので、油脂の小袋がついていることがある。これもそんなに大した量じゃないので、気にしている人間がいるとすれば、一般人であればよほどストイックなダイエットをしている者か、アスリートだろう。

食堂の昔ながらのラーメン。あれはどうだろうか。
いろいろな作り方がある。スープに直接油脂が含まれている場合と、別で鶏油(チーユ)という油脂が用意されているものがある。店によって様々な作り方があるわけだが、これは実際のところどこで食べても結構な量の油脂が含まれている。

今回、写真を用意することが出来なかったものの、某三鷹の有名老舗ラーメン店を次ぐ形で現在も繁盛しているラーメン屋がある。
極めて老舗なそのラーメン屋の一杯は、あっさりとした口当たりで、スープにも優しさを感じられるものだ。

が、そこの店のお持ち帰りラーメンと、某二郎のお持ち帰りラーメンのスープに含まれる油脂分を目測で見てみても、大げさに言われるレベルの差は見て感じ取れなかった。

目で見て「およそ二倍!」なんていう結果を期待したかったのだが、ぶっちゃけそんなレベルの差はなかった。言っても1.5倍くらいだと思う。

一般的なラーメン屋とラーメン二郎の大きな違い

パッと見だと結構違って見える油脂量の違いがかなり感じられる一般的なラーメンとラーメン二郎の油脂量の違いだが、これには一つトリックがある。

それは、ラーメン二郎のほうが麺の量が多いということだ。
目の錯覚と言えるレベルの話ではない。もっと単純だ。

一般的なラーメン屋のラーメンは、その丼に入る麺も茹で前で150g、多くて200gほど。スープを入れ、麺を沈めてみれば、麺はスープから顔を浮かばせることがない。浮かぶことがない以上は、水より比重の軽い油脂分が丼全体に広がっていく。それによって油膜の厚さが比較的に薄くなる。

では、ラーメン二郎はどうだろうか。
基本サイズと言われている「小ラーメン」を頼んだとしても、茹で前で250〜400gの麺が茹でられ、膨らみ、ドボンと丼の中に入る。

当然スープの液面から麺の頭が出てくるので、その分の油脂分が丼の縁の方面に押し出される。

よって、あのアホみたいな油層が出来上がり、その上で白い脂身まで浮いているのだから、より強烈なインパクトを残すことになるのである。

そういうわけである。老舗のあっさり中華そばとラーメン二郎のスープの油脂量にはそこまでの違いはない。

と、簡単に言うことは、できないのだ。以下に続く。


「乳化」・「非乳化」の違い

どうも普通に生きていればなかなか見ることのない、とくに家でパスタを茹でて食べるなどの自炊を行わない方にとってはより馴染みのない言葉だろう。

乳化という言葉だ。

ようは、混ざり合わないはずの水と油脂分が混ざることなのだ。
これをすることにより、水と油脂分が混ざれば白濁した見た目となる。

これは、ラーメンにおいても起こることであり、スープを強火で炊くことにより、白濁したスープになる。

こうすることによって、見た目では浮かんでいない油脂分がスープに混ざりあう。

そうすると、非常に口当たりも重たく、いわゆる「こってり」(この表現があまり好きではないが)したスープになるのである。

代表的な店として挙げると、ひばりヶ丘駅前店だ。

画像2

見よ。この荘厳なクタクタなヤサイの塔。これを私は『クタの斜塔』と呼んでいる。

この店のスープはもう、ドがつくほどの乳化スープだ。液面をご覧いただこう。

画像3

完全に醤油色をしていないのだ。これはいわゆる「家系」と呼ばれるラーメンの亜流に位置するラーメン屋の多くでも見られるし、豚骨ラーメンと言われる九州のラーメンでも見られるものだ。

こうしたスープの見た目からは、油分の実際量が判断できないものの、口当たりの重たさとまろやかさでそれを感じることができる。

これは、味のひとつなのだ。まぁ、油脂分なので内臓への負担が多いことは確実。

「アブラ」というコール


とはいえ、だ。

ラーメン二郎と言えばコールだ。コール
ここまで来たら何のことか、なんて言わせる気はサラサラない。

ラーメン二郎はコールが存在する。それは、前回、前々回の記事でも言及した「ニンニク」「ヤサイ」というワードだ。

「ニンニク」はニンニクの有無を聞いてもらえるもの。
「ヤサイ」は、ヤサイの増減について聞いてもらえるもの。

そして「アブラ」…文字通り背脂やその他謎の部位の脂身を上から乗せるか否かを問うものである。

その脂身は基本的にスープに油脂分を与えるために調理段階でブチ込まれているものだ。

スープの入った寸胴の中でプカプカと浮かび、提供されるときを今か今かと待っているのだ。

「アブラ」の効果は以下の通りだ。

画像4



・おいしい


以上である。脂身は美味しい。店によってその脂身が背脂であるとかバラ肉であるとか、噂によると腿肉の脂身を使用しているという店もあるらしい。


画像5


とにかくこの脂身が入ると、その舌触りのよさ、味のまろやかさ、そして脂身の芳醇な香りを口いっぱいに楽しむことができる。

当然ながらこれが多すぎると胃もたれする。強靭な胃腸を持っている人間ならまだしも、年間でラーメン二郎を100杯くらい食っている人でも当然お腹を下す。

ただし、この脂身が非常に重要な味わいを引き出すということだけは間違いない。でなければこんなコールは生まれない。店によってその脂身の量や質についての違いが生まれることも、個性のひとつとなるのだ。

アブラコールによってスープの塩分が若干緩和する印象もある。当然、塩分の絶対量は変わらないので、塩分が控えられるというより、よりしょっぱいものを求めるようになってしまう可能性は否定できない。

アブラコールは諸刃の剣であることによって、より我々の心をがっつりと掴んで離さない魅力となるのである。


悪魔の皿「別皿アブラ」


また、亜流の二郎系においては、このアブラそのものを武器にしている店がある。

画像6

「別皿アブラ」だ。

あんたも好きねえ、と思うかもしれない。

しかしながらこれはスープに浮かんでいるアブラとは違い、醤油やその他調味料で味付けが成されている。

これは立派な味変アイテムである。

なんかちょっとスープが薄いな、塩分がほしいな、と思ったときにこれをラーメンに入れる。
もしくはこのアブラの皿に麺をドボンとぶち込んでしまう。これで十分に味わいが深くなる効果を期待できる。

さらに、これに生玉子をかけ合わせてみるのはどうだろうか。

画像7

こんなん残飯だろと言わんばかりの見た目だが、これが最高に美味いのだ。

思い出してほしい、日本人諸君。
君たちの多くは玉子かけご飯が大好きではないか。

ようは溶き卵にお醤油を垂らしてご飯にかける。
それにアブラが加わり、ご飯が麺に変わっただけなのだ。


もうアナタのよだれが垂れていることを想像できる。
私はアナタの心の扉を開けようとしてるのである。


アブラの有無はあなたの自由


画像7


いかがでしたでしょうか。

胃もたれした人もいたでしょう。当然です。私も食った後は胃もたれします。

お腹も下します。当然ながらお腹を下します。

でも…やめられないのです。これが事実。
ラーメン二郎が合法ドラックと言われる所以は、これとニンニクに担がれているところが大きいのです。

用法・用量に気をつけ、以下の製品等をご愛用の上、お楽しみください。


追伸:ラーメン二郎では食券提示時に「アブラ少なめ」「アブラ抜き」に対応してくれる店もあります。ご参考までに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?